白澤社ブログ

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プラトン『ティマイオス/クリティアス』新訳刊行

白澤社ではこのたびプラトン著/岸見一郎訳『ティマイオス/クリティアス』を刊行いたしました。
秋の夜長に、時おり星空を仰ぎながら読むのに最適の本です。古代ギリシアの叡智が語る壮大な自然哲学をご堪能ください。

新刊『ティマイオス/クリティアス』概要

[書 名]ティマイオス/クリティアス
[著 者]プラトン/[訳者]岸見一郎
[体 裁]四六判上製、224頁
[定 価]2,200円+税
[ISBN] 978-4-7684-7959-9 C0010 \2200E

内容紹介

 宇宙創造から人類の誕生までを物語る壮大な『ティマイオス』は、プラトンの著作中、もっとも広く長く読み継がれてきた。西洋思想史におけるその影響は甚大であり、現代でもなお西田幾多郎ホワイトヘッドヴェイユからクリステヴァデリダに至るまで刺激を与え続けている。
 本書はこの謎と魅力に富んだ宇宙論に、アトランティス伝説で有名な未完の続編『クリティアス』をあわせて訳出した。

プラトンの数学的思弁は、……神秘の世界を探検する知性の未来について思いをはせる天才の所産である。」ホワイトヘッド
「『ティマイオス』の核となる考えは、わたしたちが生きるこの宇宙の基体でもあり実体であるものは、愛だということである。」ヴェイユ

【「訳者まえがき」より】
 ラファエロのフレスコ壁画である『アテネの学堂』には、その中央部にプラトンアリストテレスの並び歩む姿が描かれている。プラトンは右手の指で天上を指さし、その左手には『ティマイオス』を携えている。
 他ならぬ『ティマイオス』をプラトンが携えているのは、『ティマイオス』の影響力は甚大であり、プラトンの対話篇中、もっとも多く引用されてきたからである。

著者略歴

プラトン(Πλάτων)
 前427年、アテナイで生まれた。はじめは政治家を志していたが、師ソクラテスの刑死に衝撃を受け、『ソクラテスの弁明』『クリトン』を執筆。以後、『プロタゴラス』『ゴルギアス』『メノン』などソクラテスを主な登場人物とする多くの対話篇を著す。前386年頃、アテナイ郊外のアカデメイアに自らの学園を創設。後進の指導に当たりながら『国家』『パイドロス』『テアイテトス』などを執筆。前367年、シケリア島に招かれたのを機に同地の政変に巻き込まれ、収拾案を提言した、プラトンの真作とされる『第七書簡』が伝えられている。晩年はアカデメイアアリストテレスらを指導しながら『ソピステス』『ポリティコス』『法律』などを執筆。本書に収めた『ティマイオス』と『クリティアス』も晩年の作品と推定されている。前347年没。

訳者略歴

岸見 一郎(きしみ いちろう)
 1956年、京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。奈良女子大学文学部(古代ギリシア語)、京都教育大学教育学部(哲学)、甲南大学文学部(西洋哲学史)、近大姫路大学看護学部生命倫理)非常勤講師を経て、現在、京都聖カタリナ高校看護専攻科(心理学)、明治東洋医学院専門学校教員養成科(教育心理学)、鍼灸学科(臨床心理学)非常勤講師。
 著書に『嫌われる勇気』(古賀史健と共著、ダイヤモンド社)、『よく生きるということ 「死」から「生」を考える』(唯学書房)、『生きづらさからの脱却』(筑摩書房)、訳書にアドラーの『人生の意味の心理学』(アルテ)など多数。

底本について(凡例より)

一、本書は、バーネット版プラトン全集(J. Burnet, Platonis Opera Vol. IV, Oxford Classical Texts, 1902)を用いたが、これとは異なる読みをした箇所もある。
一、訳文の上にある[ ]内の数字とabcdeは、ステファヌス版全集(H. Stephanus, Platonis opera quae extant omnia, 1578)のページ数と各ページ内のABCDEの段落づけとおおよそ対応させたものである。引用は、このページ数と段落によって示す。
一、章分けは、十八世紀以降のフィッシャー(J. F. Fischer)の校本に由来する慣用のものに従う。ただし、目次の見出しは読者の便宜のために訳者が付した。

目次

訳者まえがき
凡例
ティマイオス/クリティアス登場人物

ティマイオス
1 ソクラテスによる理想国家論の要約/2 三人の語り手、ティマイオス、クリティアス、ヘルモクラテスへのソクラテスの要請/3 クリティアスによるソロンのエジプト訪問とアトランティス物語の要約/4 クリティアス、このあと誰がどんな話をする予定かを告げる/5 ティマイオス、宇宙の起源について語り始める/6 生きものとしての宇宙、宇宙のモデル、単一の宇宙/7 宇宙の構成要素と構成原理/8 宇宙の魂の構造/9 魂の運動/10 永遠の似像としての時間の創造/11 時間を産み出すものとしての惑星とその軌道/12 生きものの四つの種族、目に見える神々の運動/13 神々の誕生/14 人間の魂の創造/15 身体に制約された魂の軌道の混乱/16 頭と四肢の制作と視覚、聴覚/17 必然の導入/18 範型・似像・場/19 宇宙創造以前の火、土、水、空気の状態/20 物質の構成要素としての三角形と正多面体/21 一つの宇宙、形の火、土、水、空気への配分/22 火、土、水、空気の相互変換/23 物質の絶え間ない運動/24 火と水の種類/25 土の種類と土と水が混合してできたもの/26 感覚的諸性質/27 快や苦の原因/28 味覚/29 匂いと聴覚/30 色/31 人体の制作、心臓と肺/32 胃、肝臓、脾臓/33 腸、骨、肉、皮膚/34 生きものとしての植物/35 血管と灌漑システム/36 呼吸/37 まわり押し/38 養分の循環と老化/39 病気の原因/40 息、粘液、胆汁による病気/41 魂の病気/42 魂と身体の世話/43 最善の生/44 女、鳥獣、水棲類の誕生、結語

クリティアス
1 ティマイオスからクリティアスへ。死すべき人間について描写することの困難/2 ヘルモクラテスの励まし/3 アテナイの創生/4 古アテナイの国土/5 古アテナイのアクロポリス/6 アトランティス物語にギリシア名が用いられる理由/7 ポセイドン神によるアトランティス開発/8 アトランティスの構造/9 王宮と神殿/10 アトランティスの地形/11 アトラス王家の統治/12 徳を失ったアトランティスの人々(中断)

〈訳者解説〉『ティマイオス』の宇宙論
付・現代の思想家たちによる言及