白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

永野潤著『改訂版 イラストで読むキーワード哲学入門』刊行

新刊『改訂版 イラストで読むキーワード哲学入門』(永野潤著)が発売となりました。

〔改訂版〕イラストで読むキーワード哲学入門 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

2019年に旧版を刊行して以来、哲学のキー概念を著者自ら描いたイラストをもとにわかりやすく解説するユニークさが評判を呼んで版を重ね、このたび改訂版刊行の運びとなりました。

ラノベや漫画を駆使した解説が加筆されたほか、装幀も一新しました。

52の哲学のキーワードを図解したイラストもいくつか新しくなっています。

本書の第一の特色である、著者自ら描き下ろしたイラストについては、著者によって「内容を説明する動画など」を公開するブログも立ち上げられています。↓

『[改訂版]イラストで読む キーワード哲学入門』 (hateblo.jp)

 

本書のもう一つの特色は、分析哲学と実存哲学の変則二刀流の太刀さばきです。

本書で最も多く言及される哲学者は、フランス実存主義の代表者サルトル。著者の永野さんは本邦有数のサルトル研究者ですから、サルトルが出てくるのは当然ですが、一方で、ラッセル、ライル、パトナム、パーフィット、ウェストン、チャーマーズといった英語圏の、いわゆる分析哲学に色分けされる哲学者たちの名前も目立ちます。

最近でこそ、分析哲学に影響を与えたウィトゲンシュタインを実存哲学の祖キルケゴールの継承者に見立てる試み(『〈実存哲学〉の系譜 キェルケゴールをつなぐ者たち』(鈴木 祐丞):講談社選書メチエ|講談社BOOK倶楽部 (kodansha.co.jp))も出てきましたが、ブログ担当の学生時代には分析哲学と実存哲学は水と油、同じ哲学科内でも分析哲学専攻と実存哲学専攻とでは話が通じないと言われたものでした。

20世紀哲学の2大潮流を巧みに使い分ける永野さんの頭の中はどうなっているのか? それこそイラストで図解してもらいたいところです。

『世界4月号』岡野八代論文を勝手に読む

雑誌『世界4月号』(岩波書店)に広告を出しました。今回のラインナップは新刊『ひとり親のエンパワメントを支援する』と好評既刊『結婚の自由 』です。

ところが掲載誌を手にしてみると、特集1として「痛みからつながる―女性と法の現在」、特集2として「学校 息苦しさからの脱却」とあります。

あらら、この特集なら好評の『ケアするのは誰か?』と第5刷出来の『よい教育とはなにか 』の方がよかったかなと悔やんでも後の祭りです。

しかも、特集1「痛みからつながる―女性と法の現在」には、『ケアするのは誰か?』の訳者・共著者の岡野八代さんが「ケアと正義―あるいは〈法と女性〉を語る居心地の悪さについて」と題した論文を寄稿しているではありませんか。

岡野さんの『ケアするのは誰か?』をラインナップに加えなかったことが、ますます居心地の悪いことになってしまいました。

それでも気を取り直して、岡野さんならきっと良いことを書いているはずと期待して論文を読んでみると、期待にたがわず救わることが書いてありました。

後半の、ジェニファー・ネデルスキーというカナダの政治思想家の議論を紹介している箇所です。引用します。

「ネデルスキー自身はたとえば、いかにシングル・マザーに対する法制度の在り方が、彼女たちと福祉課課の職員との間に主従関係をつくりだしているのか、その改善のためには、より開かれた情報発信や、彼女たちの尊厳や自律が平等に尊重される必要があると論じる。また、カナダにおいて離婚が容易にできるようになった法の改正が、婚姻の意味を大きく転換させたことにふれ、法律は平等、自律、自由、責任といったわたしたちの価値観を大きく変えると指摘する。」(岡野八代「ケアと正義―あるいは〈法と女性〉を語る居心地の悪さについて」、『世界4月号』岩波書店、2023.4、145-146頁)

素晴らしい! 引用した文の前半は『ひとり親のエンパワメントを支援する』、後半は『結婚の自由』のテーマに深くかかわるものではありませんか? 違う? いえ、きっとそうです。そうに違いありません。

というわけで、雑誌『世界4月号』(岩波書店)に出した広告のラインナップは正解だったということに社内的にはなったのでした。

国際女性デー

今日は、国際女性デーですね。ミモザの日ともいうそうです。

3月8日、女性にミモザの花を贈るイタリアの習慣からその名が生まれたとか。

ミモザの花束に本も沿えると、いっそう素敵な贈り物になります。

黄色いミモザの花束と『結婚の自由』(右上)、『ケアするのは誰か?』(右下)、『事実婚夫婦別姓社会学』(左)。

本の詳細とご注文は白澤社ホームページへ。↓

結婚の自由 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

ケアするのは誰か? | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

〔改訂新版〕事実婚と夫婦別姓の社会学 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

なお、ミモザの花は白澤社では扱っておりません。

人工知能はウェディングケーキの夢を見るのか?

 もうすぐホワイトデーですね。プレゼントのお返しはお決まりですか? 

 定番のクッキーもいいですが、本もすてきな贈り物になります。

『結婚の自由──「最小結婚」から考える』(植村恒一郎、横田祐美子、深海菊絵、岡野八代、志田哲之、阪井裕一郎、久保田裕之著)は春らしいカラフルな装幀といい、今話題沸騰のテーマといい、プレゼントにぴったり!

 もう少し重厚感を出したい方には、エリザベス・ブレイク著『最小の結婚―結婚をめぐる法と道徳』(久保田裕之監訳)がサイズ感といい、内容の濃さといい、腹持ちがよいと評判です。

 今年のホワイトデーはクッキーをつまみながら白澤社の結婚本を読んでお過ごしください!

結婚の自由 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

最小の結婚 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

 ついでですが、今話題のChat GPIに『最小の結婚』の評判を尋ねてみました。

アメリカの哲学者エリザベス・ブレイク著『最小の結婚』の評判は?」

エリザベス・ブレイクの『最小の結婚』については、多くの批評家から高い評価を受けています。本書は、結婚の倫理的な側面に焦点を当て、結婚を選択することの意味や、個人的な自由と社会的な期待との関係などを探求しています。

この本は、現代社会で結婚に対する見解が変化しつつある中で、興味深い問題を提起しています。多様な文化やバックグラウンドを持つ人々にとって、結婚は異なる形を取ることがあり、その意味も変化しています。『最小の結婚』は、これらの複雑な問題について深く考察し、新しい視点を提供しています。

批評家たちは、本書が深く洞察力があり、結婚についての従来の見解を根本的に問い直すものであると賞賛しています。また、ブレイクの明快で洗練されたスタイルも高く評価されています。

ただし、一部の批評家は、本書があくまで中流階級の白人女性の視点から書かれていることを指摘し、より広い視野で結婚について探求する必要性を主張する意見もあります。

総合的に見ると、『最小の結婚』は、結婚に関心のある読者や、結婚に関する哲学的な探求を行いたい人々にとって、価値のある本であると言えます。

「『最小の結婚』は、結婚に関心のある読者や、結婚に関する哲学的な探求を行いたい人々にとって、価値のある本」!

 AIにもおおむね好評のようです。

 それにしても、人工知能はウェディングケーキの夢を見るのか?

 

『非戦と仏教』電子版発売

長らく品切れとなっておりました菱木政晴著『非戦と仏教──「批判原理としての浄土」からの問い』電子書籍が2月17日に発売されました。

「殺してはならぬ、殺さしめてはならぬ」(ダンマパダ)を教義の一つとする仏教は、非戦・非暴力の宗教のように見えながら、実際には過去に戦争を賛美し殺し合いを強いてきた。戦争・紛争の止まない現代にあって、仏教は暴力を防ぐことはできないのか。

非戦・非暴力の視点から、改めて釈迦、親鸞の思想を捉え直すと同時に、今村仁司清沢満之の思想』を題材に、清沢の思想と今村の暴力論を批判的に検証する。

電子書籍版:ISBN978-4-908660-02-3/販売価格2000円+税

非戦と仏教 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

世界各地で止まない紛争に加えウクライナへのロシア軍侵攻による戦争が世界大戦の様相を帯びてきている現在、「平和」と「平等」の希望を捨てない、捨てたくないすべての人に読んでもらいたいという非戦・非暴力を目指す本書の主張が重要さを増しています。

以下の電子書店でご購読いただけます。

(販売電子書店:AmazonKindle)・紀伊國屋書店楽天Kobo・BookLive!・honto・Reader Store・auブックパス・iBooks Store・理想書店

バレンタインデーに『結婚の自由』を!

もうすぐバレンタインデーですね。プレゼントには定番のチョコもいいですが、本もすてきな贈り物になります。

『結婚の自由──「最小結婚」から考える』(植村恒一郎、横田祐美子、深海菊絵、岡野八代、志田哲之、阪井裕一郎、久保田裕之著)は華やかな装幀といい、今話題沸騰のテーマといい、プレゼントにぴったり!

結婚の自由 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

もう少し重厚感を出したい方には、エリザベス・ブレイク著『最小の結婚―結婚をめぐる法と道徳』(久保田裕之監訳)がサイズ感といい、内容の濃さといい、お手頃です(義理チョコ替わりには不向きです)。

最小の結婚 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

今年のバレンタインデーはチョコをつまみながら白澤社の結婚本を読んでお過ごしください!

 

佐賀県郷土コレクション企画展「御家交代―虚像と実像」(1/20-3/12)のご案内

化け猫ファンの皆様に朗報です。

佐賀県立図書館と佐賀県立佐賀城本丸歴史館でとても興味深い企画展が開催されています。

公式HPに「そこに猫はいたか」という文句が躍るように、いわゆる「鍋島怪猫伝」の背景となった佐賀藩の藩主交代劇を、図書館では「御家交代の虚像―鍋島猫騒動―」、佐賀城本丸歴史館では「御家交代の実像―龍造寺から鍋島へ―」と題して展示を行い、文芸と史実の両面から立体的に照らし出す、実に興味深い構成となっています。

さらに、2月5日には、講談師・神田山緑師匠による「怪談・鍋島猫騒動」の実演も催されるとか。

その上、2月11日には高野信治氏(九州大学名誉教授)による歴史館ゼミナール「鍋島猫騒動―御家交代の物語化と怪異性―」も開講されるということで、化け猫の話をたっぷりと楽しめます。

講談とゼミナールは申込みが必要です。

詳しくは公式HPへ↓

https://www.sagalibdb.jp/event/

小社刊『〈江戸怪談を読む〉猫の怪』(横山泰子・早川由美ほか著)は、鍋島化け猫騒動の原型と考えられる『肥前佐賀二尾実記』の翻刻と現代語訳を収録しています。

猫の怪 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

また、東雅夫編『江戸の残映―綺堂怪奇随筆選』には、寛永六年に佐賀藩の申し入れで化け猫騒動の芝居が中止となったエピソードを記した「猫騒動の怪談」が収録されています。

江戸の残映 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)