白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

なぜ岸見一郎さんか?

このたび小社から刊行いたしましたプラトンティマイオス/クリティアス』について、なぜ岸見一郎さんが訳者なのか?というご質問をしばしばいただきます。
つまり、岸見一郎さんはベストセラーになった『嫌われる勇気』(古賀史健と共著、ダイヤモンド社)他の著作で知られるアドラー派の心理学者・カウンセラーであって、プラトンの翻訳者としては専門外なのではないかという趣旨のお尋ねです。
巻末の訳者略歴をご覧になればおわかりのように、岸見さんは京都大学大学院で哲学を学び、奈良女子大学京都教育大学などで古代ギリシア語や哲学史を講じておられた哲学者・ギリシア哲学研究者です。
小社としては、プラトンの訳者として適任と判断して、本書の翻訳をお願いいたしました。
以下に、岸見さんがご自身のフェイスブックに書かれた言葉を引用します。
https://www.facebook.com/ichiro.kishimi/posts/10208360211631254?notif_t=like

 何年もかけて翻訳したプトンの『ティマイオス/クリティアス』が刊行されます。来週には大きな書店に並ぶはずです。
 『ティマイオス』は京都大学の藤澤令夫先生の演習で読んだのが最初です。途中、母が病気で倒れ、出席できなくなったことがありました。その間のページだけが書き込みがありません。長く休んだにもかかわらず、単位は取ることができました。翻訳を完成し、ようやく休んだ代わりにかせられた宿題をやり遂げることができたように思います。

ちなみに文中に登場する「京都大学の藤澤令夫先生」とは、岩波版『プラトン全集』の編者で、『パイドロス』『国家』といったプラトンの著作の翻訳(いずれも岩波文庫)のほか、『ギリシア哲学と現代』『プラトンの哲学』(いずれも岩波新書)のような一般読書人向けの啓蒙書も執筆され、ギリシア哲学研究の推進と普及に大活躍された哲学者です。