新刊『江戸の残映』(岡本綺堂著/東雅夫編)に収められた綺堂の随筆「甲字楼夜話」は「髪切」という妖怪についての短文から始まります。
どなたもご存知の通り、江戸時代は誰もが髷を結っていましたが、この髷が本人の気づかぬうちに元結からブツリと切り落とされるという怪現象がしばしば起こったようです。
この怪現象を髪切と呼び、その悪戯の主は狐だとかいろいろと考えられたのですが、絵に描かれたものでは手と口がハサミになっている化物が髪切だとされています。
ところが綺堂は「俗に髪切は猿の仕業なりなど云い伝うる」と書いています。狐でも化物でもなくて猿です。
髪切は猿の仕業、これはちょっと面白いのじゃないかなと思うわけです。
『青蛙堂鬼談』の「猿の眼」(東雅夫編『岡本綺堂怪談文芸名作集』双葉社所収)や『半七捕物帳』の「歩兵の髪切り」を読み返すときに「甲字楼夜話」の「髪切」を念頭に置くと、また少し興味が増すのではないでしょうか。
『岡本綺堂怪談文芸名作集』(東雅夫編、双葉社)は、奇談の名手・岡本綺堂の怪談小説の傑作選です。
双葉社さんの紹介サイト↓
岡本綺堂 怪談文芸名作集 | 双葉社 (futabasha.co.jp)
小社の新刊『江戸の残映』は、一般の書店さんでは来週10/20か21頃に販売開始となりますが、明日、岡山県勝央町の勝央美術文学館さんのイベントで一足お先にお披露目となります。↓
令和4年度 勝央美術文学館 特別展 岡本綺堂生誕150年記念展 奇譚の神様 | 勝央町美術文学館 (shoo.lg.jp)
─綺堂生誕祭─〈東雅夫が読む岡本綺堂・こども怪談コンクール表彰式・東雅夫講演会〉参加申込のお知らせ | 勝央町美術文学館 (shoo.lg.jp)