白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

嵐の夜に『岡本綺堂怪談文芸名作集』

新刊『岡本綺堂怪談文芸名作集』(東雅夫編、双葉社)をご紹介します。

帯に「生誕150周年記念/アンソロジーの決定版!」、「一世紀余を経て、なお冴えわたる綺堂怪談の真髄が、ここに赫々と!」とうたわれているとおり、奇談の名手・岡本綺堂の怪談小説の傑作選です。

双葉社さんの紹介サイト↓

岡本綺堂 怪談文芸名作集 | 双葉社 (futabasha.co.jp)

収録されているどの作品も面白いのですが、台風接近のニュースを聞きながら頁をめくっていると気になるのが「異妖編」の「三 龍を見た話」です。

この「異妖編」はK君(おそらく綺堂本人でしょう)が語ったという設定で、江戸時代を舞台とした三つの掌編で構成されています。その第三話が「三 龍を見た話」。

 ここにはまた、龍をみたために身をほろぼしたという人がある。それは江戸に大地震のあった翌年で、安政三年八月二十五日、江戸には凄まじい暴風雨が襲来して、

…と、語り出されます。

 その暴風雨の最も猛烈をきわめている二十五日の夜の四つ(午後十時)過ぎである。下谷御徒町に住んでいる諸住伊四郎という御徒士組の侍が、よんどころない用向きの帰り路に日本橋の浜町河岸を通った。

 暴風雨の夜、諸住伊四郎はタイトル通り「龍」を見ることになるのですが、嵐の描写、そして龍かもしれない不思議なものに遭遇する描写が素晴らしいのです。

 この続きはぜひ『岡本綺堂怪談文芸名作集』(東雅夫編、双葉社)でお読みください。

 ちなみに小社でも岡本綺堂生誕150年を記念して東雅夫編『江戸の残映―綺堂怪奇随筆選』を絶賛準備中であります。乞うご期待!