白澤社ブログ

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岡本綺堂「四谷怪談異聞」(東雅夫編『江戸の残映―綺堂怪奇随筆選』所収)

今日、7月26日は鶴屋南北東海道四谷怪談』初演の日というご縁で「幽霊の日」なのだそうです。

四谷怪談と言えば小社では『実録四谷怪談―現代語訳『四ツ谷雑談集』』(横山泰子序、広坂朋信訳注)を出しておりますが、今回は別の一冊をご紹介いたします。

岡本綺堂の怪奇趣味溢れる随筆を集成した東雅夫編『江戸の残映―綺堂怪奇随筆選』には、「四谷怪談異聞」が収録されています。

江戸の残映 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

南北の芝居の原型となった四谷怪談とは、もとは四谷左門町に住む幕府御家人の夫婦についてのゴシップに過ぎなかったものが同時代の噂話を吸収して長編怪談にふくれあがったものと考えることもできます。

幕府御家人だった父を持つ岡本綺堂の「四谷怪談異聞」は世間で知られている怪談とは異なる美談ヴァージョンのお岩伊右衛門物語を伝えています。

怪談か美談か、兎もかくも一説として掲げて置く。勿論、南北翁の傑作に対して異論を挟さむなどと云うわけでは決して無い。(東雅夫編『江戸の残映―綺堂怪奇随筆選』、168頁)

猛暑の夜に冷やした茶などを召し上がりながらご一読ください。