新刊『江戸の残映』(岡本綺堂著/東雅夫編)に収められた「十番雑記」は関東大震災で自宅を焼かれた岡本綺堂が麻布十番の仮住まいでの日々を書き留めたもの。
麻布十番の綺堂の住まいは狸坂と暗闇坂に挟まれたところにありました。この二つの坂の名前を綺堂は気に入ったと見えて、「狸坂くらやみ坂や秋の暮」の句を残しています。
さらにこんなことも書いています。
坂の名ばかりでなく、土地の売物にも狸羊羹、狸せんべいなどがある。カフェー・たぬきと云うのも出来た。子供たちも「麻布十番狸が通る」などと歌っている。狸はここらの名物であるらしい。(岡本綺堂著/東雅夫編『江戸の残映』白澤社、129頁)
狸羊羹に狸せんべい! ぜひ味わってみたいし、カフェー・たぬきにも入ってみたいと麻布十番を訪ねてみました。
担当Hはオシャレな街に似つかわしくない狸ですので、異人さんから話しかけられたらなんとしようとどぎまぎしながら狸坂と暗闇坂を行ったり来たりしてみました。
狸せんべいがありました!
麻布十番 たぬき煎餅 公式オンラインショップ (tanuki10.com)
都営地下鉄大江戸線麻生十番駅を出てすぐです。門前にでかい信楽焼の狸がドーンとかまえています。本と同じサイズの小さい詰め合わせを買いました。
残念ながら狸羊羹とカフェー・たぬきは現存しませんでしたが、秋の日のお散歩にうってつけの麻布十番の町でした。
『江戸の残映』はまもなく書店での発売が始まります。乞うご期待!