白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

茂木謙之介『SNS天皇論――ポップカルチャー=スピリチュアリティと現代日本』

小社刊『表象天皇制論講義』の著者・茂木謙之介さんから新著『SNS天皇論――ポップカルチャー=スピリチュアリティ現代日本』(講談社)をご恵贈いただきましたのでご紹介します。

版元・講談社さんの紹介ページはこちら↓

『SNS天皇論 ポップカルチャー=スピリチュアリティと現代日本』(茂木 謙之介):講談社選書メチエ|講談社BOOK倶楽部 (kodansha.co.jp)

詳しい目次は上掲の講談社さんのサイトをご覧ください。

菊のタブーを恐れることなく、むしろ菊のタブーって何?と言わんばかりのSNS上の言説・表象を題材に、表象天皇(制)という視座から現代のポップカルチャーを縦横無尽に分析して見せた気鋭の快著(いや、あえて怪著とした方が茂木さんは喜ぶかも…)です。

特に「第三章 ポップカルチャー天皇(制)論序説」は、ゆるキャラ初音ミク・アイドル・現代天皇小説・天皇マンガと面白いネタがてんこ盛りです。

その極めつけは第三章第三節「3 monstrum としての『シン・ゴジラ』」です。映画『シン・ゴジラ』(庵野秀明監督)から「天皇(制)への批評性」を読み出し、「ゴジラ凍結=封印された東京駅丸の内口すなわち大手町が(中略)「将門の首塚」のある、まさにその場所であること」を指摘し、そこからさらに驚くべき洞察をしてみせるこの節は、本書の白眉と言ってもよいくらい手に汗握る面白さです。

面白いじゃないですか。実に面白い。

しかし、問題もあります。

問題とは、この面白いネタがどうしてうちの『表象天皇制論講義』に入っていないのかということではなく、「第二章 狂乱と共犯―令和改元におけるメディア表象をめぐって」の終わりで、平成の天皇退位儀礼に関連して、「諸星大二郎によるマンガ『妖怪ハンター』(集英社、図4)をオマージュしたツイート」が注目を浴びたことにふれながら、そこで参照されている図が『妖怪ハンター』第一話「黒い探究者」なのだということです。

「黒い探究者」は「黒スーツにロン毛の」考古学者・稗田礼二郎が初めて登場する記念すべきエピソードですが、しかし、茂木さんが引いているツイートにあるような「儀式の順序が間違っているんだ」云々というセリフは「黒い探究者」にはありません。似たセリフがあるのは「闇の客人」の方でしょう。これは大問題であります!(諸星ファンの小社営業担当個人の見解です。)

この問題点につきましては、いつかコロナが収束したら、茂木さんとこってりと話し合いたいと思います。(あくまで小社営業担当個人の意見です。)