白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

牡丹の花が赤いのは…

昨日は、埼玉県秩父市まで足を延ばして、秩父困民党ゆかりの地を訪ねてまいりました。

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写真は散策の途中で拝観した牡丹の寺・少林寺さんの庭に咲く深紅の牡丹です。
ところで、牡丹の花の赤さとは何なのか?という議論が、新刊『イラストで読むキーワード哲学入門』(永野潤著)にあります。
実は著者・永野潤さんが例に挙げているのは牡丹の花ではなくリンゴなのですが…。
「目の前に、リンゴが見える。このリンゴは赤い。でも、リンゴの「ほんとうの」色って何色なのだ?」と永野さんは問いかけます。
キーワード「第二性質」の項です。

 

17世紀イギリスのジョン・ロックという哲学者は「色」などの性質は、物そのものがもっている性質ではなく、感覚が私の心の中に作り出す性質なのだ、と考えた。ロックは、大きさや形などは、物そのものがもっている性質と考え、それを「第一性質 primary quality」と呼んだが、一方、色やにおいや味などは、心の中にしかない、物そのものがもっていない性質と考え、それを「第二性質 secodary qurlity」と呼んだ。(永野潤『イラストで読むキーワード哲学入門』白澤社、p26)

 

永野さんはロックの「第二性質」から議論をさらに一歩進めて、もし、色彩が人間をはじめとする生物にとってのみ意味のあるものだとすれば、遥かな遠い未来に地球上のすべての生物が絶滅したあと、色にはどのような意味があるのだろうかと問いかけます。
『イラストで読むキーワード哲学入門』の表紙カバーに掲載したイラストが、まさにその場面を描いたものです。

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