白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

カントのお誕生日

 4月22日は哲学者イマヌエル・カント(1724-1804)のお誕生日です。小社の新刊『カントの「噓論文」を読む』(小谷英生著)『カントの「噓論文」を読む』カントの「噓論文」を読む | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)はこの日を記念して奥付の発行日をそろえてあります。カント先生、おめでとうございます。

 小社刊行物で最初にカントが登場したのは、2000年に刊行した小社の最初の出版物、大越愛子ほか著『フェミニズム的転回』(フェミニズム的転回 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp))の第2章「倫理学ジェンダーの視点」(志水紀代子)と第3章「美的判断力の可能性」(持田季未子)でした。志水先生も持田先生も故人となってしまわれました。月日の経つのは早いものです。

 続いて2004年刊行の高橋哲哉著『反哲学入門』反・哲学入門 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)の第14講「戦争をしない国家は可能か」ではカント『永遠平和のために』を読み解いています。高橋さんはその後、2015年刊行の岡野八代さんとの共著『憲法のポリティカ』憲法のポリティカ | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)でも『永遠平和のために』に触れています。

 2018年には小社初のカント本、網谷壮介著『カントの政治哲学入門』カントの政治哲学入門 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)を刊行しました。同書はカント政治哲学についての研究の現代におけるスタンダードを提供できたのではないかと自負しております。

 2019年刊行の訳書、エリザベス・ブレイク著・久保田裕之監訳『最小の結婚』最小の結婚 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)は、哲学的にはカント倫理学との対決と発展的継承が本書の核心と言ってもよいくらい、カントが重視されていました。

 昨年(2023)刊行した林少陽著『戦後思想と日本ポストモダン戦後思想と日本ポストモダン | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)では、第四章「戦後日本知識人の平和主義理念と「現代思想」──カント解読と「東アジア」をめぐって」でカントが日本の現代思想に与えた影響をたどっています。

 そして、カント生誕300年にあたる今年(2024)、満を持して刊行したのが小谷英生著『カントの「噓論文」を読む』です。本書にはなんとカント先生のご自身の、問題含みの論文「人間愛から噓をつく権利という、誤った考えについて」(通称「嘘論文」)が小谷英生さんの平易な訳文によって収録されています。

 生誕300年、今なお現代思想に影響を与え続けているカント、岩波文庫でも『道徳形而上学の基礎づけ』(かつての『道徳形而上学原論』)、『人倫の形而上学』第一部・第二部の新訳が刊行されています。この機会に手に取ってみてはいかがでしょう。