白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

生きられた身体

生きている死体 Living Dead といえばゾンビのことですが、生きられた身体という言葉が哲学にはあります。
永野潤著『イラストで読むキーワード哲学入門』の「生きられた身体 lived body」の項では次のようなイラストが提示されています。

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このブログで前回ご紹介した「現象学 phenomenology」の項での、「一人称の風景」を描いたイラストによく似ています。
一人称の風景にあるリンゴを手でつかもうとしている、そんな場面でしょうか。
ご存じの方も多いでしょうが、「生きられた身体」は現象学派に属する哲学者がよく使う表現です。
永野さんは次のように説明しています。

 

サルトルは「見えるものでなければ見ることはできない」と言っている。これはつまり、見えたり触れたりすることのできる身体を持っていなくては、そもそも私たちは世界へと関わることができない、っていうことである。ものを見ることができるためには、身体としてものと同じ世界に属していなくてはならないんだ。「世界への関わり」は、具体的な形をとって世界の中に存在する。そして、それが私の「身体」である。それは、対象としての身体ではなく、主観としての身体、「生きられた身体」なんだ。20世紀フランスの哲学者モーリス・メルロ=ポンティは、デカルトの「私は考えるI think 、だから私は存在する」を「私はできるI can、だから私は存在する」と言いかえている。

 

ちなみに、サルトルメルロ=ポンティデカルトといった著名な哲学者の名前が出てきますが、それらについてはすべて本書巻末の「人名一覧」に簡単な略歴と主著が紹介されています。
『イラストで読むキーワード哲学入門』はたいへん便利な一冊として、新刊書店で流通しております。定価は本体1800円+税です。
読者の皆様にはお手数をおかけいたしますが、最寄りの書店さんを通してご注文いただければ幸いです。

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