白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

怪異怪談研究会監修・一柳廣孝/大道晴香編著『怪異と遊ぶ』(青弓社)

怪異怪談研究会監修・一柳廣孝/大道晴香編著『怪異と遊ぶ』(青弓社)をご恵贈いただきましたのでご紹介します。

詳しい目次などは版元・青弓社さんの紹介ページ↓をご覧ください。

怪異と遊ぶ | 青弓社 (seikyusha.co.jp)

拝受してすぐにでもご紹介したかったのですが、なにぶん表紙カバーの装画が怖そうで手に取るのをためらっておりました。

そこで、カバーをとっちゃったらどうだろう?ポン、名案!と思ってカバーを外したらもっと怖かったという…。

恐る恐る頁を切ってみました。

大道さんによる巻頭の「はじめに」によれば、本書は「「遊び」を抜きに怪異を論じるのは難しい」ということに着目した「怪異に対する学術的アプローチの成果」であり、「文学をはじめ、民俗学社会学、宗教学といった超領域の研究者が集う怪異怪談研究会のメンバー十人による執筆で、各々の専門性に基づき、“それぞれが”「遊び」という視座を意識したうえで、怪異を論じている」とのことです。

伊藤龍平さん執筆の第1章「幽霊に萌える、怪異で遊ぶ」を読みはじめましたが、面白いじゃないですか。実に面白い。

確かに皿屋敷のお菊ちゃんは「会いに行けるアイドル」的な側面があります(by飯倉義之さん)。そこに着目して恐怖と笑いの接近をベルクソン『笑い』を引きながら分析しています。たいへん興味深く読ませていただきました。

巻末には、気鋭の怪談作家・川奈まり子さんと編著者のお二人による鼎談も掲載されていて、こちらも読むのが楽しみです。

 

研究会 「岡野八代先生と話すケアとアートマネジメントの出会い」のご案内

来る6月3日に小社刊『ケアするのは誰か?』の著訳者・岡野八代さんの登壇するオンライン研究会「岡野八代先生と話すケアとアートマネジメントの出会い」(「アート/ケア/文化政策」研究会主催)が開催されますので、ここにご案内いたします。(要事前申込、先着30名まで)。

 「アート/ケア/文化政策」研究会は、三月に『ケアするのは誰か?』の原著者J・トロントさんを招いて講演会を開催しておられます(詳細は下記)。

今回の研究会はトロント講演を受けて「アートマネジメントやケアの現場にいる方や研究者、学生を主な参加対象とし、みなさんと意見交換する時間を多くもつことで、トロント先生が語ったことについて理解を深め、ケアとアートマネジメントの接点をみなさんと探ってみたいと考えています。」とのことです。

詳しくは下記をご参照ください。

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茂木謙之介『SNS天皇論――ポップカルチャー=スピリチュアリティと現代日本』

小社刊『表象天皇制論講義』の著者・茂木謙之介さんから新著『SNS天皇論――ポップカルチャー=スピリチュアリティ現代日本』(講談社)をご恵贈いただきましたのでご紹介します。

版元・講談社さんの紹介ページはこちら↓

『SNS天皇論 ポップカルチャー=スピリチュアリティと現代日本』(茂木 謙之介):講談社選書メチエ|講談社BOOK倶楽部 (kodansha.co.jp)

詳しい目次は上掲の講談社さんのサイトをご覧ください。

菊のタブーを恐れることなく、むしろ菊のタブーって何?と言わんばかりのSNS上の言説・表象を題材に、表象天皇(制)という視座から現代のポップカルチャーを縦横無尽に分析して見せた気鋭の快著(いや、あえて怪著とした方が茂木さんは喜ぶかも…)です。

特に「第三章 ポップカルチャー天皇(制)論序説」は、ゆるキャラ初音ミク・アイドル・現代天皇小説・天皇マンガと面白いネタがてんこ盛りです。

その極めつけは第三章第三節「3 monstrum としての『シン・ゴジラ』」です。映画『シン・ゴジラ』(庵野秀明監督)から「天皇(制)への批評性」を読み出し、「ゴジラ凍結=封印された東京駅丸の内口すなわち大手町が(中略)「将門の首塚」のある、まさにその場所であること」を指摘し、そこからさらに驚くべき洞察をしてみせるこの節は、本書の白眉と言ってもよいくらい手に汗握る面白さです。

面白いじゃないですか。実に面白い。

しかし、問題もあります。

問題とは、この面白いネタがどうしてうちの『表象天皇制論講義』に入っていないのかということではなく、「第二章 狂乱と共犯―令和改元におけるメディア表象をめぐって」の終わりで、平成の天皇退位儀礼に関連して、「諸星大二郎によるマンガ『妖怪ハンター』(集英社、図4)をオマージュしたツイート」が注目を浴びたことにふれながら、そこで参照されている図が『妖怪ハンター』第一話「黒い探究者」なのだということです。

「黒い探究者」は「黒スーツにロン毛の」考古学者・稗田礼二郎が初めて登場する記念すべきエピソードですが、しかし、茂木さんが引いているツイートにあるような「儀式の順序が間違っているんだ」云々というセリフは「黒い探究者」にはありません。似たセリフがあるのは「闇の客人」の方でしょう。これは大問題であります!(諸星ファンの小社営業担当個人の見解です。)

この問題点につきましては、いつかコロナが収束したら、茂木さんとこってりと話し合いたいと思います。(あくまで小社営業担当個人の意見です。)

藤目ゆき著『「慰安婦」問題の本質』電子書籍版発行

藤目ゆき著『「慰安婦」問題の本質──公娼制度と日本人「慰安婦」の不可視化』電子書籍版が、本日4月22日、各電子書店サイトで発売されました。

本書は、2012年末安倍晋三政権発足以来、歴史の事実を歪める反「慰安婦」の言説の激しさが増していた最中の2015年2月に刊行したものです。近現代史研究家であり、フィリピンの元「慰安婦」女性の体験記録にもたずさわった著者が、「慰安婦」問題の解決になぜ至らないのか、その問題の本質に迫ります。

しばらく品切れとなっておりましたが電子書籍版にてご購読いただけます。

詳しくは小社ホームページ↓をご覧ください。

「慰安婦」問題の本質 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

 

東大入学式総長式辞が『ケアするのは誰か?』に言及

4/12に行われた令和4年度東京大学学部入学式総長式辞で、藤井総長がトロント(著)/岡野八代(訳・著)『ケアするのは誰か?』に言及しました。

総長式辞より該当箇所を引用します。

「 「ケア」に関して、政治学者のジョアン・トロントは、Who cares?という秀逸なタイトルの本を著しています。Who cares?は、直訳すれば「ケアするのは誰か」という問いかけですが、英語圏の日常会話では多くの場合「知ったことか」という切り捨ての意味で用いられます。この「そんなことは知らない、ケアなどするものか」という姿勢が、尊大なマジョリティやエリートのなかに蔓延しがちであること、「自分たちが社会から自立して存在しているのだ」と考えるような危険なものであることを、トロントは批判的に指摘しています。その意味で「ケアレス」とは、単なる不注意によるミスなのではなく、関わりあわないと決めてしまっているがゆえの鈍感さや傲慢さなのではないか、常に自省が必要です。」

令和4年度東京大学学部入学式 総長式辞 | 東京大学 (u-tokyo.ac.jp) より。

第5刷出来の『ケアするのは誰か?』については小社ホームページをご覧ください。

ケアするのは誰か? | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

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『図書新聞』に『クダン狩り』書評掲載!

本日発売の『図書新聞』6569号に、東雅夫編著『クダン狩り──予言獣の影を追いかけて』の書評が掲載されました。評者は朝里樹さん。

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「底知れぬ恐ろしさと魅力」という見出しで本書の魅力を紹介してくれました。冒頭の部分から引用します。

「「クダン」とは漢字で「件」と書く。人偏に牛と記すその名前が表すのは、人間の頭と牛の体を持った妖怪だといわれている。まれに牛から生まれることがあり、疫病や農作、戦争などについて予言し、数日で死ぬ。その予言は必ず当たる、などと語られる妖怪である。また自分の絵を家に張っておけば災厄を免れることができる、などと言ったという話もある。

 本書は著者である東雅夫氏が、そんな人面牛身の妖獣、件、そして件に関連する現代の怪談「牛の首」や「牛女」などに迫った記録の集大成である。」

このように朝里さんは本書のテーマ「クダン(件)」の説明をしてから本書の内容を詳しく紹介してくださいました。

そして、「「クダン狩り」を志す人々に多大な影響を与えることになるであろう」という「予言」でしこの書評はしめくくられています。

評者の朝里樹さんは、言わずと知れたあの『日本現代怪異事典』(笠間書院)の編者。

もちろん「クダン」も「牛の首」も「牛女」も同事典に載っています。

朝里さん、ありがとうございました。

ちなみに、この書評が掲載されている『図書新聞』6569号には、伊藤慎吾・氷厘亭氷泉編『列伝体・妖怪学前史』勉誠出版の書評(評者・廣田龍平氏)も掲載されているという、お化け好きには記念碑的な号になっております。

図書新聞さんのサイト↓

今週の図書新聞 (toshoshimbun.com)

書評続々の『クダン狩り』は好評発売中です。

『神奈川新聞』に『クダン狩り』書評掲載!

『神奈川新聞』2022/4/3書評面で、東雅夫編著『クダン狩り──予言獣の影を追いかけて』が紹介されました。評者は下野綾さん。

「禁忌に触れる恐れと誘惑」という見出しで本書の特徴を手際よく紹介してくれました。

「半人半獣のクダンは生まれて間もなく、戦争や、はやり病などの予言を残して死んでしまうという。」

「禁忌に触れる恐れが誘惑となり、人はクダンに魅了されるのかもしれない。」

下野さん、ありがとうございました。

『クダン狩り』は好評発売中です。

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