白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

「週刊読書人」で『ケアするのは誰か?』紹介

発売中の書評誌「週刊読書人」2021年1月22日号(3374号)で、『ケアするのは誰か?──新しい民主主義のかたちへ』(J・C・トロント著/岡野八代訳・著)が紹介されました!

評者は図書館流通センター(TRC)データ部の水谷妙子さん。「図書館発!こんな本が面白い」という特集の一冊として取り上げられました。

共にケアする社会へ」と題された水谷さんの書評は、冒頭の文から勢いがあってかっこよいので一部を抜粋します。

「わたしたちはいつまでケアを買い叩くようなことを続けるのだろうか。思いやりや気遣いは市場優先の社会をうまく動かすための潤滑油に過ぎないのだろうか。」

このように切り出した水谷さんは続けて、本書『ケアするのは誰か?』の議論の特徴を紹介してくださっています。

なかでも大事なご指摘は、『ケアするのは誰か?』におけるケア概念の広さです。

「著者は「ケア」をとても広い意味で定義する。それは「この世界でできる限り善く生きるために、この世界を維持し、継続させ、そして修復するためになす、すべての活動を含んでいる」。通常ケアと言われて思い浮かべる、介護、医療、看護といったものだけでなく、それ以外の一般的な職業上の行為(例えば車の整備や教育など)もこの「ケア」概念には含まれるようだ。」

 あくまでも小社の独断ですが、図書館の司書さんのお仕事もケアなのかなと思います。

乱れた書架を整理したり、傷んだ本を補修したり、本を探しに来た人に書誌情報を提供したりする仕事は、「この世界を維持し、継続させ、そして修復するためになす、すべての活動」に含まれると思うのです。

 水谷さんは、書評の最後をこう締めくくってくださいました。

「今の日本社会がこうしたケアの価値を不当に低く見積もっていることは訳者の文章に詳しく、とくにコロナ禍でのあれこれを思うにつけ何度も強く頷かずにはいられなかった。このままでこの先やっていけるとはとても思えない。わたしたちがこれから生き、そして社会として生き延びるために読むべき本だ。」

わたしたちがこれから生き、そして社会として生き延びるために読むべき本」!。

素敵な書評をありがとうございました。

水谷さんの書評全文は「週刊読書人」さんのサイト「週刊読書人ウェブ」でも読むことができます↓

https://dokushojin.com/review.html?id=7916

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blkswn radioで『ケアするのは誰か?』朗読配信!

黒鳥社さんのポッドキャスト番組「blkswn radio」の「音読ブラックスワン」にて『ケアするのは誰か?──新しい民主主義のかたちへ』(J・C・トロント著/岡野八代訳・著)の朗読が配信されました。

「音読ブラックスワン」は、黒鳥社さんのコンテンツディレクター・前WIRED編集長・若林恵氏が、いま読んでほしい本を紹介し、一部を朗読するコンテンツとのことです。

今回、朗読されたのは『ケアするのは誰か? 新しい民主主義のかたちへ 』のp.42からp.54までの箇所、トロントさんによる「第1章 ケアするのは誰か?」の「2 ケア株式会社」の前半、ケアの視点から市場第一主義の問題点を指摘した部分です。

この機会にぜひお聴きください。

音声は以下の各プラットフォームで配信されております。

Apple Podcast

https://podcasts.apple.com/jp/podcast/%E3%82%B1%E3%82%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%AF%E8%AA%B0%E3%81%8B-%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E6%B0%91%E4%B8%BB%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%81%AE%E3%81%8B%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%B8-%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%A2%E3%83%B3-c-%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%88-%E5%B2%A1%E9%87%8E%E5%85%AB%E4%BB%A3-%E9%9F%B3%E8%AA%AD%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%AF%E3%83%B3-34/id1502262436?i=1000505551457

 

Spotify

https://open.spotify.com/episode/7LmXZdeFQl727jLW9swdVJ?si=e3JtpOzyT3CNoH54LCikyA

  

Google Podcast

https://podcasts.google.com/feed/aHR0cHM6Ly9hbmNob3IuZm0vcy8xNDkwODU5NC9wb2RjYXN0L3Jzcw/episode/YmU4OWE4NDgtN2VlYy00ZGEzLTk3MmItZTA5Y2E0ZGFhZGIx?sa=X&ved=0CA0QkfYCahcKEwjwnqWOkKfuAhUAAAAAHQAAAAAQAQ

 

◉その他▼

https://anchor.fm/blkswn-radio/episodes/C34-ep33fe

 ちなみに「音読ブラックスワン」では、これまで、

『コロナの時代の僕ら』パオロ・ジョルダーノ

『言葉の魂の哲学』古田徹也

マツタケ 不確定な時代を生きる術』アナ・チン

『すべて名もなき未来』樋口恭介

『ブルシット・ジョブ:クソどうでもいい仕事の理論』デヴィッド・グレーバー

など、30冊以上の本を朗読・紹介してこられたとのこと。

おお、どれも面白そうですね。

『ケアするのは誰か?』との関連で言えば、グレーバー『ブルシット・ジョブ』(岩波書店)が気になります。

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紹介続々の『ケアするのは誰か?』は、定価1700円+税で好評発売中です。

『新敬語「マジヤバイっす」』が毎日放送(MBS)のTV番組に登場!

毎日放送MBS)のテレビ番組に小社刊『新敬語「マジヤバイっす」―社会言語学の視点から』(白澤社・定価2200円+税)の著者・中村桃子さんが出演しました(2021年1月6日放映)。

番組は、毎日放送MBS)の情報番組「ちちんぷいぷい」のコーナー、「へぇ~のコトノハ」です。

放送は1月6日でしたが、YouTubeチャンネルで視聴することができます↓

「○○っす!」という言葉使いはアリですか⁉︎

https://youtu.be/8QiekdnmLoQ

MBSアナウンサー公式チャンネルによる番組紹介を転載します。

「三ツ廣アナと話していると

よく「◯◯っす!」と言います(笑)

この言葉使いはいつ頃からどのようにして生まれたのでしょうか?

言葉を研究し

「新敬語 マジヤバイっす」という本を出版されている

関東学院大学の中村桃子先生に

教えていただきました。」

同局の古川佳子アナウンサーと三ツ廣政輝アナウンサーによる軽妙なやりとりに、ゲストの中村桃子さんが明るい解説を加えた楽しい番組です。ぜひご覧ください。

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紹介続々の『新敬語「マジヤバイっす」』は、新刊書店にて定価2200円+税で好評発売中です。

「毒がいっぱい、薬もいっぱい」・安田登『野の古典』紀伊國屋書店

『野の古典』はウンチのお話から始まります。

ウンチと言えば『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』(湯澤規子著、ちくま新書)も昨秋の話題になりましたが、皆さんはウンチ派ですか?ウンコ派ですか?

『野の古典』の著者・安田登さんは大便派のようです。第一講「神話の大便 扇と夏の恋」を開くと、太い字で黒々と「大便が重要だ」という見出しが目に飛び込んできます。

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『野の古典』は能楽師である安田登さんが、『古事記』から近代の古典『武士道』まで、日本で「古典」として読まれてきた書物の数々(『論語』『詩経』等の漢籍も含む)を、目次で挙げられているだけでも、ざっと27冊以上、ユーモラスな筆致で読み解いた一冊です。

『野の古典』の目次や正しい解説はこちら↓

野の古典 / 安田 登【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア (kinokuniya.co.jp)

 ある意味でまじめな、教養の香り漂う本なのですが、それがどうしてウンチ、もとい、大便の香気も漂わせているのか? 安田さんによればこういうことです。

安田さんは「こてこての古典人間」だそうです。でも「古典なんて嫌いだ」という人の気持ちもわからなくもない、と言います。

「中学生や高校生が目にする古典は、何度も何度も検閲の網を潜った、刺激の少ない、毒にも薬にもならないものです。目黒のサンマです。そりゃあ、面白くないのは当たり前です。

 しかし、だからといって文科省を責めることはできません。授業中に古典を読みながら、むらむらと性欲が湧いてきたら困るし、「学校なんてアホらし」と教室を出ていかれてもマズい。そうはならないような箇所だけを集めたのが、学校で使われる古典の教科書なのです。」(安田、前掲書、18頁)

安全だけれどもつまらない学校の古典、教科書の古典に対して、本書で安田さんの紹介する「野の古典」は「毒がいっぱい、薬もいっぱい」、つまり、ちょっと危ないけれどとても面白い古典の世界です。

こういうコンセプトの本ですから、『古事記』を大便から読むのは当然で、アダルト小説的『御伽草子』(ああっ、浦島太郎と乙姫様がっ!)、ゲス不倫どころではない『伊勢物語』(「男」ってそういうやつ)、きわどいベストセラー『東海道中膝栗毛』など、純情な小社にとっては、眼を覆った手の指と指のすき間からチラ読みしなければならないような面白いお話が、『論語』や『風姿花伝』、『おくのほそ道』などの、とてもためになるお話の合間に披露されていて、たいへん楽しめました。

なかでも、これはぜひ多くの人に読んでほしいと思ったのが、第十三講「眠りの芸術 能『黒塚(安達原)』」です。能を見物に行くと眠くなってしまうのが悩みでしたが、なんと、居眠りしながら薄目をあけて見るくらいがちょうどよいのだそうです。現役の能楽師が言っているのですから、きっとほんとうなのでしょう。このことがわかるだけでも本書を読んだ甲斐はあるというものです。

各章末には、親切な読書案内もついていてとても便利です。特に第二十一講「怪談、怨霊、鎮魂 『死霊解脱物語聞書』『雨月物語』」の読書案内は充実していて素晴らしいものです(当社比です)。

謹賀新年2021

あけましておめでとうございます。

白澤社は本日より通常通りの営業を始めました。

今年(2021)は丑年。

省みれば創業以来、鈍牛のような歩みの小社が今日を迎えられたのは、ひとえにご購読下さった読者のおかげと存じ篤く御礼申し上げます。

重版したばかりの『ケアするのは誰か?──新しい民主主義のかたちへ』(J・トロント著/岡野八代訳・著)は正月休み中も好調です。

重厚な一冊なのに熱心な読者に迎えられて品薄になっております『最小の結婚―結婚をめぐる法と道徳』(E・ブレイク著・久保田裕之監訳)を重版いたします。

白澤社は本年も、人文・社会のジャンルで出版活動に取り組んでまいります。

どうかよろしくお願いいたします。

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私ども白澤社については、こちらの記事をご覧ください。↓

https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/20110128/1296200886

「白澤社」という社名の由来については、こちらの記事もご覧ください。↓

https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/20170120/1484899180

今後もより一層のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

2020年仕事納め

白澤社は今日が仕事納めです。

明日から年明け1月3日まで、年末年始のお休みとなります。

2021年1月4日(月)から平常通りに営業いたします。

今年は、下記の5点の単行本を刊行いたしました。

『新敬語「マジヤバイっす」』

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[書 名]新敬語「マジヤバイっす」

[副書名]社会言語学の視点から

[著 者]中村桃子(なかむら ももこ)

[頁数・判型]四六判並製、224頁

[定 価]2200円+税

ISBN978-4-7684-7979-7

「そうっすね」「マジっすか」などの「っす」言葉をある種の敬意表現と位置付けた本書は、意表を突いた着眼点に、それって敬語っすか? とご評判をいただき、日経、朝日、讀賣の各紙ほか、『アエラ』、『婦人公論』など、書評続々、めでたく三刷となりました。

『日本近代再考』

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[叢書名]学習院女子大学グローバルスタディーズ

[書 名]日本近代再考 Japanese Modernity Reconsidered

[編者]時安邦治[編・訳] [著者]マイク・フェザーストン/ヴォルフガング・シュヴェントカー/玉利智子/木村絵里子 [訳者]寺田晋、時安邦治

[頁数・判型]A5判並製、160頁

[定 価]2600円+税

ISBN978-4-7684-7980-3

『平和と平等の浄土論』

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[書 名]平和と平等の浄土論──真宗伝統教学再考

[副書名]真宗伝統教学再考

[著 者]菱木政晴

[頁数・判型]四六判並製、208頁

[定 価]2400円+税

ISBN978-4-7684-7981-0

封建的と言われていた江戸時代の真宗教学に新たな光をあてた意欲作です。

宗教と文化の専門新聞「中外日報」で紹介されました。

『ケアするのは誰か?』

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[書 名]ケアするのは誰か?

[副書名]新しい民主主義のかたちへ

[著 者]ジョアン・C・トロント[著]/岡野八代[訳・著]

[頁数・判型]四六判並製、160頁

[定 価]1700円+税

ISBN978-4-7684-7982-7 C0031

内容は本格的な政治哲学の本なのに、発売以来、口コミでご評判が広がって、たちまち重版という、奇跡のような一冊。

図書新聞20年下半期読書アンケートや『BRUTUS』誌でも取り上げられました。本格的な書評が出てくるのは年明けからでしょうか。

『河田嗣郎の男女平等思想』

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[書 名]河田嗣郎の男女平等思想

[副書名]近代日本の婦人問題論とジェンダー

[著 者]亀口まか

[頁数・判型]四六判上製、272頁

[定 価]3800円+税

ISBN978-4-7684-7983-4

埋もれていた思想家の先駆的な男女平等論を思想史の中に位置づけた労作です。

よいお年を!

言語学、日本近代史、近世仏教論、ケア論・政治哲学、ジェンダー論・近代思想史とジャンルはさまざまですが、僭越ながら、今これが大事・今これが面白いと思うテーマに取り組んできたつもりです。

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このほか、既刊書では『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』エヴァ・フェダー・キテイ著、岡野八代・牟田和恵監訳)が四刷となりました。重厚なケア倫理の研究書が息長く読者に迎えられていることは小社の喜びとするところです。

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さて来年は、これまた重厚な一冊なのに熱心な読者に迎えられている『最小の結婚―結婚をめぐる法と道徳』(E・ブレイク著・久保田裕之監訳)の重版を皮切りに、今これが面白いと思う本の出版に精いっぱい取り組んでまいります。

それでは、よいお年をお迎えください。

プレゼントには『ケアするのは誰か?』を

明日はクリスマス・イブですね。プレゼントはお決まりですか?

本もすてきな贈り物になります。

 小社の新刊『ケアするのは誰か?──新しい民主主義のかたちへ』(J・トロント著/岡野八代訳・著)はいかがでしょうか。

カバー絵がハートウォーミングに見えませんか?

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内容の充実度に比してお値段もお手頃価格とのご評判をいただいております。

プレゼント選びのセンスに自信のない方に最適なチョイスと言えるでしょう(当社比)。

『ケアするのは誰か?──新しい民主主義のかたちへ』は、全国の主要書店で好評発売中です。

店頭在庫をネットで確認できるサイトもあります。

紀伊國屋書店さんのサイト↓

紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア - 在庫を調べる (kinokuniya.co.jp)

ジュンク堂書店さんのサイト↓

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