白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

ハロウィンにわいわい天王

もうすぐハロウィンですね。
ハロウィンの仮装には定番の吸血鬼やゾンビも結構ですが、わいわい天王はいかがでしょうか。
わいわい天王とは何者か?
このたびめでたく主要書店の店頭で発売開始となりました新刊『異世界と転生の江戸』(今井秀和著)の表紙カバーをご覧ください。

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タイトルの右側にいる、天狗の面をかぶったサムライのような人物がわいわい天王です。
この絵は、北尾紅翠齋画・山東京伝文『四時交加』にある一場面を加工してあしらいました。
天狗の面に見えるものは猿田彦の面とも言われています。
右手に持った扇子でお札をまき散らしています。
まき散らすお札は、厄病除けで信仰された牛頭天王のお札だそうです(原画にはお札はありません)。
羽織袴に刀を腰に差しているところはサムライのようですが、羽織がずっこけているところは着こなしというものでしょうか。
この、わいわい天王は、元をたどれば修験者や神道者のアルバイトだったという説もありますが、文政年間に江戸にあらわれた大道芸人だったようです。
わいわい天王は、平田篤胤『仙境異聞』にも出てきます。

 

「わいわい天王とて、鼻高く赤き面をかぶり袴を着し、太刀をさし、赤き紙に天王と云ふ二字を摺りたる小札をまき散らして子供を集め、天王様は囃すのがおすき、囃せや子ども、わいわいと囃せ、天王様は喧嘩がきらひ、喧嘩をするななかよく遊べ、と囃しつつ行く」(子安宣邦校注『仙境異聞・勝五郎再生記聞』岩波文庫より。仮名遣いは適当に変えてありますのでご注意)

 

「天王様は囃すのがおすき、囃せや子ども、わいわいと囃せ」、おそらく何か節を付けて歌ったのでしょう。
こうした大道芸人の一人に、寅吉少年がついていくと、人気のないところで仮面をとったその姿は、幻術使いの修験者で、やがて寅吉少年は彼に弟子入りして江戸を騒がす天狗小僧となるのですが、その顛末は今井秀和著『異世界と転生の江戸』をご覧ください。
同書の書誌データは以下の通りです。
[書 名]異世界と転生の江戸
[副書名]平田篤胤松浦静山
[著 者]今井秀和(いまい ひでかず)
[頁数・判型]四六判並製、240頁

[定 価]2500円+税

ISBN978-4-7684-7977-3