白澤社ブログ

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おいしい狸汁の作り方

寒い夜は鍋物があたたまりますね。そこで狸汁の作り方をご紹介します。
レシピは『新選百物語』巻一の第三話「くりかえす狸汁の食傷」の頭注に引かれている江戸時代の料理書『料理物語』(一六四三)の記述を参考にしました。
なお狸汁はもちろん狸(タヌキ)または貉(アナグマ)の肉を使った料理ですが、近所のスーパーで売っていないので豚肉とコンニャクで代用しました。
具だくさんの豚汁、あるいは味噌味で肉入りのけんちん汁のイメージです。

 

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【材料】(分量はすべて「適量」ということで)
・豚肉(今回はバラ肉を使いました)
・コンニャク(食べやすい大きさに切っておきます)
・ごま油
・生姜
・だし(かつおだし)
・酒
・大根(薄く切ります)
ごぼう(ささがき)
・味噌
・ニンニク
・塩

【作り方】
一、まず鉄鍋を用意します。ガスコンロを使う現代では土鍋でもよいのですが、江戸時代の気分ということで。今回はすき焼き用の鍋を使いました。
二、鉄鍋にごま油少々を温め、豚肉とコンニャクに生姜少々を加えて炒ってみました。これは狸肉の臭みを消すための作業なので、狸肉を使わない場合には必要ない段取りですが、これも江戸時代の気分を出すためひと手間かけます。
三、酒とかつお節の出し汁を鍋に入れてアルコールが飛んだら火を弱めます。
四、大根とごぼうを鍋に加えて煮込みます。
五、大根に火が通ったところで味噌を溶きいれ、ひと煮立ちさせたら火を止め、薬味にニンニクをすりおろして出来上がりです。味が薄かったら塩で調整します。

☆ワンポイント―具材には「大こん・ごばう其外色々」(『料理物語』)とありますから、お好みで豆腐や長ネギ、キノコを加えても美味しくできます(写真参照)。

【もっと簡単な作り方】
スーパーで売っているけんちん汁の具セットを鍋で煮て、しゃぶしゃぶ用豚肉を加え、白だしと味噌で味を調え、刻んだニンニク少々を浮かせば出来上がり。すぐ出来ます。

狸肉の代用として豚肉とコンニャクを用いた理由は、貉の肉は猪肉と味がよく似ているという言い伝えがあることと、お寺さんの精進料理としては狸肉の代わりにコンニャクを使うことになっているからです。
狸汁にしようと狸を追っかけまわした挙句、狸に三度も化かされてさんざんな目にあう「くりかえす狸汁の食傷」は、『新選百物語―吉文字屋怪談本 翻刻・現代語訳』(監修=篠原進/翻刻・注・現代語訳=岡島由佳)で読むことができます。

新選百物語 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)