白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

乾達『統合失調症からの回復のヒント』刊行

このたび白澤社では、乾達著『統合失調症からの回復のヒント――地域精神障害者生活支援の経験から――』を刊行しました。
町医者が、往診で一人の統合失調症の患者さんに出会い、精神病患者を抱える家族への差別や困難を知ったことから、生活支援活動が始まりました。本書は、長年の支援の実践から生まれた、回復に向けてのアドバイスと励ましの本です。

概要

書 名:統合失調症からの回復のヒント
副 題:地域精神障害者生活支援の経験から
著 者:乾 達(いぬい すすむ)
体 裁:四六判並製、208頁
定価:本体価格1,800円+税
ISBN978-4-7684-7956-8

内容

町医者としての診療のかたわら、30年近い年月を精神障害の患者さんやその家族と、診察室ではなく生活の場で共に語りあい、学びあってきた著者が、患者さんやケアする家族が直面する切実な問題に答えます。
治療やリハビリに役に立つヒントを標語にした「精神科リハビリかるた」や、精神科医療への提言も盛り込んだ、回復のためのアドバイス満載の一冊。

「まえがき」より。

私は、四二年間、町医者として静岡市清水区の乾医院で診療を行なってきました。
内科医で糖尿病が専門ですが、町医者としての仕事のかたわら、二五年以上、地域の精神障害者支援にも携わってきました。
支援の一環として二〇〇〇年に立ち上げた「NPO法人 精神障害者生活支援よもぎ会」で、機関誌「よもぎ会通信」を毎月発行しています。B5版4頁のニューズレターですが、統合失調症の患者さんや、ケアする家族の方々に知っておいて欲しいと思った精神科の治療やリハビリについてのアドバイスを、医師としての経験も交えて書き綴ってきました。今回、同じ病で苦労されている方々の参考にもなるのではないかと考え、その時々に応じて書いてきた内容を、主題別にまとめ直すことにしました。

目次より

はじめに──内科医が精神障害者生活支援にたずさわって
1 統合失調症と診断されたら
 1 統合失調症とはどんな病気?
 2 統合失調症の治療
 3 統合失調症と告知されたら
 4 統合失調症をよくするには
2 薬との付き合い方
 1 統合失調症の多すぎる薬
 2 薬の働きを知る
 3 薬の継続と減量
3 精神病が治るということ
 1 病への偏見をなくす
 2 自立すること
 3 統合失調症が治るということ
コラム1 映画「ビューティフル・マインド
4 自殺を防ぐには
5 精神科リハビリ
 1 精神科リハビリの要点
 2 医師と信頼関係をつくる
 3 幻聴・幻想は相手にしない
 4 仲間づくり
コラム2 うつ病は治る病──愛情のこもった励ましを
6 精神科の医師へ
コラム3 私の医療哲学──医療の主役は患者自身
7 家族によるケア
 1 必要なのは家族への教育と支援
 2 患者との接し方
 3 子育ての要領で
 4 大切なのは聴くこと
 5 統合失調症との付き合い方──まとめ
コラム4 地域精神医療福祉の充実を
8 精神科リハビリかるた
あとがき

著者プロフィール

乾 達(いぬい すすむ)
乾 達(いぬい すすむ)
1935年 静岡県生まれる。
1962年 日本医科大学卒業。東京医科歯科大学病理学教室で学んだ後、長野県佐久総合病院内科、青梅市立病院内科に勤務。
1970年 父・蕃の診療所を継ぐ。
1979年 清水地域医療研究会発足。地域訓練事業(リハビリ教室)の普及に努める。
1987年 精神障害者の生活支援にかかわり始める。
1997年 精神障害者の憩いの場「ワークステーション・どんぐり」誕生。
2000年 「NPO法人精神障害者生活支援よもぎ会」設立、精神障害者の地域生活支援の活動を続ける。
2012年3月、乾医院での診療から引退。「よもぎ会」の活動は継続中。