白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

「女性手帳」?

報道されてから少し時間が経ってしまいましたが、政府は「女性手帳」というものの導入を検討しているそうです。

「「女性手帳」導入に異論なし 少子化対策の作業部会」@共同通信
http://www.47news.jp/CN/201305/CN2013050701001941.html
 政府は7日、少子化対策を議論する作業部会「少子化危機突破タスクフォース」(座長・佐藤博樹東大大学院教授)の会合を開き、晩婚化や晩産化が進む中、若い世代の女性向けに妊娠・出産の知識や情報を盛り込んだ「女性手帳」(仮称)の導入を議論、委員からは異論などは出なかった。
 女性手帳は「妊娠や出産の適齢期を知らない人が多い」との指摘を踏まえて検討されたもので、女性の将来設計に役立ててもらうのが狙い。作業部会の下で具体的な妊娠・出産支援対策を討議してきたサブチームが導入を提案した。

???な話だと思うのですが、座長をつとめる東大の先生やら、人口学会の会長さんやら、大企業の社長さんやら、かつての人気歌手さんやら、日テレの解説委員さんやら、その他、錚々たる顔ぶれの方々から異論は出なかったのだそうです。
この手帳、私どもとしては異論しかありません。

女性手帳」???を配布する

安倍首相はかつて「ジェンダー・フリーは社会を破壊する」などとして、激しい性教育バッシングをした自民党内の作業部会の会長でした(小社刊『ジェンダー・フリー・トラブル』木村涼子編著、参照)。
東京都でもちょうどそのころ、七生養護学校に、サンケイ新聞記者を伴った(!)3人の都議が養護学校性教育を非難し教材を没収するというとんでもない事件が起き、現場の先生方が子どもたちのために議論を重ね試行錯誤しながら培ってきた性教育ができなくなるということがありました(小社刊『学校は雑木林』河原井純子著、参照)。
首相のブレーンでいま男女共同参画会議のメンバーになっている、「新しい教科書をつくる会」副会長などを務めた「親学」の先生は、夫婦別姓を「国を破壊するもの」と攻撃し、「発達障害は親の愛情不足」などといった「思想」の持ち主。
そんな安倍政権下の少子化担当大臣が何を血迷ったのか、若い世代の女性たちに「妊娠・出産の知識や情報を盛り込んだ「女性手帳」」を配布したいのだそうです。性教育を破壊した首相の政権下で、若い女性たちに何を教えるのでしょうか。コウノトリが赤ちゃんを連れて飛んでくるのを待つ方法?
子どもが出来たら「発達障害は親の愛情不足」などと脅されながら、3年の育休(企業が3年も仕事に就かない人を雇っておけるのか? 非正規雇用者は?)を取れるかどうかわからないのに、認可保育所入所もままならず、子育てすることになるわけですね、現状では。それに耐え忍ぶ覚悟を持ちましょうということでしょうか?
女性手帳」の次は、「国民の本義」「家庭の本義」を復活させる?
人の生き方に口を出す政府。こんな事のために税金を払っているんじゃない…と言いたい。
嗚呼、ため息も出ません。