白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

またまた!『マルクスの教育思想』が紹介されました

青柳宏幸著『マルクスの教育思想』が、日本教育学会「教育学研究」誌(第78巻第2号 〈特集 教育・福祉・労働−ボーダーレス化の中での教育学の役割〉)の「書評」欄で紹介されました。
日本教育学会さんのホームページはこちら→http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsse4/
書評をご執筆くださったのは、黒沢惟昭先生。
内容をていねいに紹介したうえで論評した論文で、本書の議論のポイントを的確に指摘してくださっています。
冒頭の部分だけ抜粋します。

社会主義国家が権威があった時代、「マルクス主義教育学」(以下「マル教」と略記)と呼ばれる研究が流行した。主としてマルクスの著作から「教育」関連の章句を抽出、アレンジして教育学を構想しようとする試みであった。さらに、旧ソ連東ドイツなどの教育の紹介も「マル教」の一環とされた。
これらの文献に関心を持ったが、違和感も感じた。当時の社会主義国家を完成されたものと見なし、その原理、教条から教育を捉えようとしていたからである。その違和感を払拭するためにはマルクスの思想を原点から形成過程を追思惟し、そこからマルクスの方法を探り、教育思想を再構成する作業が必要と考えた。旧著『疎外と教育』(新評論、1980年)はその試みである。小著は『経済学・哲学草稿』(以下『経哲草稿』と略記)より前の初期マルクスの検証にとどまったが、本書は中・後期にまで射程を広げ、マルクスの教育思想を追究している。まさに本邦初の「マルクスの教育思想」研究の生誕である。

黒沢先生はこのあと、各章ごとに内容を要約してくださったうえで、「本邦初と述べたが、世界的にも類書はないのではないか。今後、マルクス研究者も教育学者も本書を無視することはできないだろう。消去できない功績である」と評してくださっています。
黒沢先生、ありがとうございました。