白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

『〈怪異〉とナショナリズム』(怪異怪談研究会監修、青弓社)

小社刊『表象天皇制論講義』の著者・茂木謙之介さんから新著『〈怪異〉とナショナリズム』(怪異怪談研究会監修、青弓社)をご恵贈いただきましたのでご紹介します。

版元・青弓社さんの紹介ページはこちら↓

〈怪異〉とナショナリズム | 青弓社 (seikyusha.co.jp)

詳しい目次や編著者紹介は上掲の青弓社さんのサイトをご覧ください。

文学、歴史学、宗教学etcの気鋭の論者が交響して作り出す万華鏡のような一冊です。

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先陣を切るのは竜宮の姫を味方につけた鈴木彩さんによる「第1章 戦意高揚物語への接近と離反――泉鏡花「海戦の余波」における〈人間ならざるものたち〉の役割」。ちなみにこの鈴木さんの鏡花論で始まる第1部が「戦争と教化」と題されているのは何かの駄洒落でしょうか、茂木さん?

続く第2章は乾英治郎さんの狸論「出征する〈異類〉と〈異端〉のナショナリズム――「軍隊狸」を中心に」という具合で、読みだしたとたんにめまいがしそうな華麗なラインナップです。

松下浩幸さんの戦後論「第3章 恋する死者たちの〈戦後〉――『英霊の聲』と文学的なるもの」は、フーテンの寅さんのワンシーンからの引用という意表をついた書き出しで始まり、「恋」をキーワードに戦後責任論を再考するという豪快な荒業。いやあ、驚きました。

この後も面白そうな論文がぎっしりと詰まっているのですが、いま頁を切ったばかりで未読ですのでまたの機会にということにして、とりあえず茂木さん執筆の「第13章 “オカルト天皇(制)”論序説――一九八〇年代雑誌「ムー」の分析から」をながめてみました。

面白いじゃないですか。実に面白い。

しかし、問題もあります。

問題は、この面白いネタがどうしてうちの『表象天皇制論講義』に入っていないのか、ということです。

この問題点につきましては、いつかコロナが収束したら、茂木さんとコッテリと話し合いたいと思います。