白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

個性と幸福―三木清『人生論ノート』より

今夜は待ちに待ったNHKEテレ「100分de名著」の「三木清『人生論ノート』」のアンコール放映、第1回が放送されます。。
番組の案内はこちら↓
http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/64_jinseiron/index.html
小社刊『三木清『人生論ノート』を読む』の著者・岸見一郎さんが登場します。お見逃しなく。
第1回は、三木清『人生論ノート』より「幸福について」が取り上げられます。(1)
ちなみに「幸福について」は、雑誌『文学界』掲載時には、「個性と幸福」というタイトルで発表されました。(2)
そこで三木は、構想力の立場から考えれば「個性が幸福であることを意味している」と言うのですが、これはちょっと謎めいています。
そしてまた「個性とは別にタイプがあるのでなく、タイプは個性である。」とも言っています。
その後では、ゲーテを引きながら次のように言っています。
「人格は地の子らの最高の幸福であるというゲーテの言葉ほど、幸福についての完全な定義はない。幸福になるということは人格になるということである。」
個性と人格とがほぼほぼ同義に用いられているようです。
これはどう考えたらいいのかなと思っていましたら、大澤聡編『三木清文芸批評集』(講談社文芸文庫)にヒントとなる文章がありました。(3)
「性格とタイプ」と題された文章です。
ここで三木は、タイプは性格ではないと言っています。
「性格は寧ろ自然的なものである。これに対してタイプは形作られるもの、その意味で教養的、文化的また歴史的社会的なものである。」
「もし人間がただ環境からのみ限定されるものであるとしたならば、人間はタイプであることもできないであろう。タイプは単なる平均でなく、タイプ自身が個性であり、人間が真に個性的になることはタイプ的になることを含んでいる。」
つまり、タイプはほぼほぼ個性であり、人格であるわけですが、それは環境に限定されるのではなく、自ら作り上げていくものだというわけです。
だから「幸福になるということは人格になるということである」ということなのでしょう。

(1)この「幸福について」は、2016年の『三木清『人生論ノート』を読む』刊行直後に小社ブログでも取り上げました。
https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/20160712/1468311721
https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/20160714/1468488214

(2)『文学界』に連載されていた『人生論ノート』は、単行本収録の際に、いくつかの章のタイトルが変更されています。詳しくは小社ブログに「『人生論ノート』の成立と構成」として記しましたのでご覧ください。↓
https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/20160706/1467783899
さて、「幸福について」は、もとは「個性と幸福」というタイトルでした。

(3)大澤聡編『三木清文芸批評集』の版元、講談社さんによる紹介はこちら↓
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000211320

f:id:hakutakusha:20160714173342j:plain