白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

暑さ寒さも彼岸まで

暑さ寒さも彼岸まで、とことわざにいうお彼岸も過ぎて、ようやく春らしくなってまいりました。
小社のそばにある神田川沿いの桜並木のつぼみもほころびはじめたようです。
もうすぐ春ですねといえば、思い出されるのはキャンディーズではなく、三木清の言葉です。

 春はまだ遠い。けれども我々は希望を棄ててはならない。希望は徳である。希望を持つといふことの大きな徳であることが今日ほど忘れられてゐる時代はないのである。
――三木清。一九三六年三月三日掲載のコラム「詩の復活」より(『三木清全集第十六巻』岩波書店、一〇五頁)。

今年は三木清生誕一二〇周年にあたるのだそうで、それにあわせて大澤聡編『三木清教養論集』(講談社文芸文庫)が刊行されています。
版元・講談社さんの紹介サイトはこちら↓
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062903363
三木といえば新潮文庫の『人生論ノート』。かつては同じ新潮文庫から『読書と人生』と『哲学ノート』『続哲学ノート』も出ていたのですが、いまは『読書と人生』は講談社文芸文庫、『哲学ノート』は一時中公文庫で再刊されていました。
このたび新たに編集された大澤聡さんによる『三木清教養論集』は、『哲学ノート』に入っていた「新しき知性」をのぞけば、従来の文庫では読めなかった三木のエッセイやコラム、評論からセレクトしたもので、たいへん便利です。

小社でも、岸見一郎著『三木清『人生論ノート』を読む』がご好評をいただいておりますが、人生についての箴言集として読まれてきた『人生論ノート』も、ていねいに読むと、やはり三木の時事評論や哲学論文との関連がうかがわれて興味深いものがあります。
進入学のお祝いにうってつけの一冊です。