白澤社ブログ

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信濃毎日新聞で『皿屋敷』紹介

8月30日付信濃毎日新聞読書面で「江戸怪談を読む」シリーズ『皿屋敷―幽霊お菊と皿と井戸』が紹介されました。
同紙より該当箇所を引用いたします。

 「一枚、二枚―」と皿を数える物悲しい声。10枚セットの皿を1枚割ったために、井戸に身を沈めるはめになったお菊の話は、各地に伝承されている。美人薄命を生きた主人公は、怪談界のアイドル。歌舞伎、小説、映画、漫画などで何度も再解釈されてきた。岡本綺堂の純愛路線などは、その最たるものか。
 本書は播州(兵庫)と番町(東京)の基本テキストをはじめ、各地のお菊の物語を紹介、皿の意味などを解読。権力社会の最底辺に生きた女性の怨念劇などの解釈を提示している。

さまざまなジャンルで再解釈されてきたことは今井秀和さん執筆の第六章「再創造される皿屋敷」で、岡本綺堂の純愛路線については、横山泰子さん執筆の第五章「芸能史における皿屋敷」でふれられています。
播州(兵庫)と番町(東京)の基本テキスト」の紹介は、「よくぞやった」とおほめの声もいただいております。
鷲羽大介さん(仙台)、久留島元さん(兵庫)らによる第三章「日本各地の皿屋敷めぐり」も好評です。
また、ヒロインお菊の置かれた立場を、ブラック企業に勤めてしまった派遣ОLという絶妙な比喩で説明したのは、飯倉義之さん執筆の第九章「井戸と屋敷と女と霊と」です。
本書の読みどころを手際よく紹介してくださった信濃毎日新聞さん、ありがとうございました。
なお、第三章「日本各地の皿屋敷めぐり」の構成を担当した広坂さんによると、伝説の詳細は不明ながら長野県にもお菊稲荷という神社があるそうです。
ていねいに探せばまだ知られざる皿屋敷伝説が出てくるかもしれませんね。
がんばれ、お菊さん!