白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

祐天和尚のちょんまげ

先日刊行した『死霊解脱物語聞書』、おかげさまであちこちで話題になっているようです。

『死霊解脱物語聞書』読中妄想感想文

ツイッター上で感想を書き出された方がおられます。
http://togetter.com/li/337152
http://togetter.com/li/337526
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伊豆地獄極楽苑

地獄めぐりの展示をされている伊豆地獄極楽苑さんの展示物になるというお話も!
伊豆極楽苑のホームページ↓
http://izu-gokurakuen.com/
この夏、伊豆にお出かけの方はぜひお立ち寄りください。
この他、八月には『死霊解脱物語聞書』にちなんだ怪談会を企画されている方もいらっしゃいます。詳細が判明し次第、このブログでもお知らせいたします。

祐天和尚のちょんまげ

さて、『死霊解脱物語聞書』はもちろん江戸時代に刊行された出版物ですから、これを現代の読者のために活字化するにあたって底本に手を加えざるを得ない場合がありました。
旧仮名・旧漢字はもちろん、異体字、当て字もあって、どの程度まで手を加えるべきか、翻刻と解説を引き受けてくださった小二田誠二先生も小社編集担当もたいへん悩みました。
句読点も難題でした。原文には読点「、」がなく、すべて句点「。」なのです。どこで文章を区切ったらよいものやら、結局、原文に句点のなかったところは多少不自然でもそのままにして、原文に句点のあるところで、ここは現代なら読点だろうと確信を持てたところだけ読点に変更しました。
こんなわけで、本書刊行までにはさまざまなハードルがあったのですが、いちばん困ったのは挿絵です。
本書の底本は、小二田先生所蔵の正徳二年刊挿絵入りバージョンですが、実はこれに落書きがしてあったのです。
それも、祐天が菊の髪の毛をひっつかみ念仏を称えさせるという全編のクライマックスとも言えるシーンで、本書の表紙カバーにも転用している場面です。

左上の人物をご覧ください。
あろうことか、祐天和尚の頭にちょんまげが書き添えられていたのです…。
これはいったいどうしたものか。
この落書きも江戸時代の読者が描いたものだろうから、ある意味では資料的価値がないとは言えないかもしれない。
そうは言っても、挿絵に祐天が登場するのはここだけだし、僧侶なのにちょんまげがあっては興醒めだ。
…などと、さんざん悩んだ挙げ句、装幀デザインを担当した装幀屋KICHIBEがデータ上でちょんまげ部分をていねいに削り取り、祐天和尚のスキンヘッドの見事な曲線美を再現したという次第。

そんなわけで、本書掲載の挿絵も底本の雰囲気をそこねない程度に加工されていることをここにご報告いたします。