白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

「出版ニュース」で『よい教育とはなにか』紹介

出版ニュース」3月中旬号で、ガート・ビースタ『よい教育とはなにか』(藤井啓之・玉木博章訳)が紹介されました。
記事では、本書から「何がよい教育を構成するのかという問いが教育に関する議論からほとんど消滅してしまったように見える」という文章を引いてから、次のように評してくださいました。
該当箇所を抜粋させていただきます。

学力テストに象徴される成果主義エビデンス(科学的・確率的根拠)に基づく教育に関心が集まるなかで、よい教育とは何かという根本が問われている。本書はその問いを、今日の教育政策・教育実践の問題点を明らかにするなかで、アーレント、リンギス、ランシエールらを参照しつつ、資格化、社会化、主体化という教育の三つの機能を通し、民主主義と教育を結び付ける回路を提示する。その意図はよい教育のための青写真ではなく、教育の倫理的・政治的次元における論議の喚起にある。

出版ニュースさん、ありがとうございました。

「小説推理」12月号で『皿屋敷』紹介

「小説推理」2015年12月特大号の「今月のベスト・ブック・幻想と怪奇」欄で、小社刊『皿屋敷――幽霊お菊と皿と井戸』が取り上げられました。
「小説推理」さんのサイト↓
http://www.futabasha.co.jp/magazine/suiri.html
執筆は『幽』編集長としてご活躍の東雅夫さんです。
該当箇所を引用します。

大古典といえば――「累」「四谷怪談」に続く白澤社の〈江戸怪談を読む〉の第三弾は『皿屋敷――幽霊お菊と皿と井戸』(現代書館発売)。「いちまーい、にまーい……」の皿数えでおなじみのお菊さんの怪談がテーマである。広坂朋信による周到な訳注付きの原典(馬場文耕『皿屋舗辨疑録』)が収載されているのは前二冊と同様だが、今回は国文学系の「怪異怪談研究会」、歴史学系の「東アジア恠異学会」、実話系(?)の「東北怪談同盟」などに集う精鋭研究者陣による「皿屋敷」論考が、全体の三分の二近くを占める構成となっている。なかには飯倉義之「日本各地の『お菊』さん、ОKK48」などという狙いすましたタイトルの論考もあって、古風な皿屋敷怪談を現代へ紹介しようとする執筆陣の意気込みが伝わってこようというものだ。
実話性を色濃く孕む「累」や「四谷怪談」に較べて、民話性の強い「皿屋敷」だけに、国文学・民俗学・芸能史などから成る学際的なアプローチが有効であり、こうした構成が取られたことは首肯できるところだろう。
近くは『リング』シリーズの「貞子」にまで影響を及ぼしているにもかかわらず、意外にその実態が知られていない「皿屋敷」怪談の入門書として、類書を見ない一冊となった。

東さん、ありがとうございました。

取り上げていただいた『皿屋敷――幽霊お菊と皿と井戸』は、明屋書店中野ブロードウェイ店さん他の書店さんで発売中です。
ちなみに、東雅夫さん監修の『別冊宝島2407江戸・東京魔界地図帖』(宝島社)でも「お菊」や「番町」が大きく紹介されています。カラー図版がふんだんに使われていて、見ているだけで楽しいムックです。
小社としては、怪談講談の名手・一龍齋貞水師匠を囲む座談会をとりわけ面白く拝読いたしました。
版元・宝島社さんの公式サイトはこちら↓
http://tkj.jp/book/?cd=20240701

信濃毎日新聞で『皿屋敷』紹介

8月30日付信濃毎日新聞読書面で「江戸怪談を読む」シリーズ『皿屋敷―幽霊お菊と皿と井戸』が紹介されました。
同紙より該当箇所を引用いたします。

 「一枚、二枚―」と皿を数える物悲しい声。10枚セットの皿を1枚割ったために、井戸に身を沈めるはめになったお菊の話は、各地に伝承されている。美人薄命を生きた主人公は、怪談界のアイドル。歌舞伎、小説、映画、漫画などで何度も再解釈されてきた。岡本綺堂の純愛路線などは、その最たるものか。
 本書は播州(兵庫)と番町(東京)の基本テキストをはじめ、各地のお菊の物語を紹介、皿の意味などを解読。権力社会の最底辺に生きた女性の怨念劇などの解釈を提示している。

さまざまなジャンルで再解釈されてきたことは今井秀和さん執筆の第六章「再創造される皿屋敷」で、岡本綺堂の純愛路線については、横山泰子さん執筆の第五章「芸能史における皿屋敷」でふれられています。
播州(兵庫)と番町(東京)の基本テキスト」の紹介は、「よくぞやった」とおほめの声もいただいております。
鷲羽大介さん(仙台)、久留島元さん(兵庫)らによる第三章「日本各地の皿屋敷めぐり」も好評です。
また、ヒロインお菊の置かれた立場を、ブラック企業に勤めてしまった派遣ОLという絶妙な比喩で説明したのは、飯倉義之さん執筆の第九章「井戸と屋敷と女と霊と」です。
本書の読みどころを手際よく紹介してくださった信濃毎日新聞さん、ありがとうございました。
なお、第三章「日本各地の皿屋敷めぐり」の構成を担当した広坂さんによると、伝説の詳細は不明ながら長野県にもお菊稲荷という神社があるそうです。
ていねいに探せばまだ知られざる皿屋敷伝説が出てくるかもしれませんね。
がんばれ、お菊さん!

西日本新聞で『皿屋敷』紹介

「江戸怪談を読む」シリーズ『皿屋敷――幽霊お菊と皿と井戸』が、7月22日付西日本新聞夕刊で紹介されました。
該当箇所を引用いたします。

 講談「番町皿屋敷」のルーツとなった馬場文耕の「皿屋舗辨疑録(さらやしきべんぎろく)の原文と現代語訳を掲載。福岡県嘉麻市のお菊大明神など、日本各地のお菊伝説を紹介し、この怪談の魅力と謎に迫る。

http://www.nishinippon.co.jp/nlp/book_new/article/183699
上掲の記事にもありますように、本書『皿屋敷――幽霊お菊と皿と井戸』では、福岡県嘉麻市のお菊大明神を紹介しております。
嘉麻市教育委員会さんにご協力願って、同教委保管の、お菊が着ていたと伝えられる打掛の写真も掲載。お菊の割ったお皿の残りと伝えられるものは、滋賀県彦根市などいくつかありますが、衣服が残されているのはたぶんこの嘉麻市だけでしょう。
実際には江戸時代後期ごろのものだそうですが、なかなかきれいな衣装です。ぜひ本書を手にとってご覧ください。
なお、神田神保町東京堂書店さんで開かれる『皿屋敷』刊行記念イベントの日も近づいてまいりました。
和装でご来場の方、先着九名様に限り入場料無料という(小社にしては)太っ腹な特典もございますので、万障お繰り合わせのうえ、ふるってご参加ください。
お申し込みは東京堂書店さんへ。↓
http://www.tokyodoshoten.co.jp/blog/?p=8653

沖縄タイムス紙で『憲法のポリティカ』紹介

高橋哲哉・岡野八代著『憲法のポリティカ』が、6月20日沖縄タイムス紙の読書欄で紹介されました。
評者は法学者の高良沙哉さん(沖縄大学准教授)。
「未来を奪う力に対話で抗う」と題された高良さんの書評は、本書の特徴を次のように指摘しています。

改憲案の根底にある社会的・思想的背景、例えば「個人」を「人」へ書き換えるような一見些末に見える用語の変更に潜む危険などが語られ、われわれが改憲案に対して抱く「違和感」「不気味さ」の正体が、対話を通してあぶり出されていく。そして、集団的自衛権行使容認のための解釈改憲違憲性についても、徹底的に語り合うのが魅力的だ。

そして、岡野さんと高橋さんが「交戦権を認めたのでは憲法13条の個人の尊厳、生命、自由、幸福追求権を侵害するため」と、憲法13条を基準に憲法9条を位置付けている点に着目して、「立憲主義に基づく本質的な議論は明快である」と評してくださいました。立憲主義とは個人の尊厳、生命、自由、幸福追求権を守るために法で政府をコントロールするという発想だからです。
また、沖縄の基地問題について「憲法9条と日米安保体制の矛盾」が問題提起されていることにもふれられていますが、この論点については著者の一人、高橋哲哉さんの新著『沖縄の米軍基地』(集英社新書)が刊行されましたので、そちらにゆずりましょう。
一方で、高良さんは、本書で岡野さんが提起した「マイノリティーの人権やフェミニズムの視点からの議論」についても、「憲法の活用の可能性を感じさせる」と評した上で、次のように締めくくっています。

今この危機的な時代に、憲法状況を明らかにする良書である。本書を通して、2人の研究者と語り合ってみてはいかがだろうか。

高良さん、沖縄タイムスさん、本書の勘どころを的確に紹介してくださいましてありがとうございました。
なお、高良沙哉さんは最近『「慰安婦」問題と戦時性暴力』(法律文化社)というご本を出しておられます。版元の法律文化社さんの同書紹介ページはこちら↓
http://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03641-4

各紙で藤目ゆき『「慰安婦」問題の本質』紹介

ゴールデンウィークはいかがお過ごしだったでしょうか。
さて、ブログ更新のタイミングとずれてしまって、ご案内が遅れましたが、藤目ゆき著『「慰安婦」問題の本質』があちこちでご紹介いただいています。

西日本新聞で新刊案内

2015年03月25日付西日本新聞夕刊で、藤目ゆき著『「慰安婦」問題の本質』が紹介されていました。
http://www.nishinippon.co.jp/nlp/book_new/article/158339
該当箇所を引用します。

 公娼制度や廃娼運動、米軍基地周辺の性犯罪などに取り組む近現代史の研究者が、これまでに発表した論文や講演録をまとめた。なぜ慰安婦問題を解決できないのか、なぜ日本人慰安婦は名乗りでないのかにも焦点を当てる。

西日本新聞さん、ありがとうございました。

朝鮮新報に書評掲載

4月20日付朝鮮新報に韓賢珠さん執筆による書評が掲載されました。
「侵略の歴史と「慰安婦」」と題された韓賢珠さんの書評は、本書のねらいをていねいに評してくださっています。
朝鮮新報さんのサイトはこちら↓(会員のみ閲覧)
http://chosonsinbo.com/jp/2015/04/hj421-2/
韓賢珠さん、ありがとうございました。
また、掲載紙をお送りくださった朝鮮新報さん、ありがとうございました。

前田朗さんのブログ

法学者・前田朗さんのブログでもご紹介いただきました。↓
http://maeda-akira.blogspot.jp/2015/05/blog-post_6.html
記事は「軍事性暴力の本質を考える 」と題して、「女性に対する暴力、特に軍事性暴力が、いつ、だれによって、なぜ作り出されてきたのかを俎上に載せることによって、日本軍性奴隷制を世界的かつ歴史的視野で考察できるようにする。それゆえ、韓国や日本における米軍基地問題も含めて、解決に向けた連帯の視座が明確に打ち出されている」と評していただきました。
前田朗さん、ありがとうございました。
ところで、前田朗さんと言えば、大著『ヘイト・スピーチ法 研究序説 ―差別煽動犯罪の刑法学―』(三一書房)を刊行されたばかりです。
版元の三一書房さんの紹介サイト↓
http://31shobo.com/2014/12/15/ヘイト・スピーチ法研究序説/
ブログを拝見しますと、先月、邦訳の出たジェレミー・ウォルドロン『ヘイト・スピーチという危害』(みすず書房)について、章ごとに詳しく書評されています。
http://maeda-akira.blogspot.jp/2015/05/blog-post_1.html
http://maeda-akira.blogspot.jp/2015/05/blog-post_3.html
http://maeda-akira.blogspot.jp/2015/05/blog-post_4.html
http://maeda-akira.blogspot.jp/2015/05/blog-post_8.html
このウォルドロン『ヘイト・スピーチという危害』は、岡野八代さんも高橋哲哉さんとの対談『憲法のポリティカ』(p228-p229)で、『ヘイトスピーチにおける危害』として紹介しています。対談収録時には同書は翻訳されていなかったので、岡野さんは原著タイトルTHE HARM IN HATE SPEECHを直訳して紹介されたのでした。
版元みすず書房さんの紹介ページ↓
http://www.msz.co.jp/book/detail/07873.html
というように、小社の本も時折紹介されていますので、今後も気が付いたらご報告するようにいたします。

各紙で『憲法のポリティカ』続々紹介

明後日は憲法記念日ですね。
高橋哲哉・岡野八代著『憲法のポリティカ』について、憲法学者・村田尚紀さんによる書評が福島民報に掲載されたことは先日ご紹介しました。
http://d.hatena.ne.jp/hakutakusha/20150423/1429793799
その後も『憲法のポリティカ』の紹介記事が相次いでいます。
簡単ですが、下記にまとめてご紹介します。

4月23日付「西日本新聞」夕刊の新刊案内

九州のブロック紙西日本新聞さんの新刊案内で紹介されました。

自民党改憲案、死刑制度、天皇制、マイノリティーの権利、人道的介入の是非…。戦後70年の節目の年に、哲学者と政治学者が、政治の右傾化や市民社会にも浸透する排外主義とナショナリズムなど日本社会が迎える危機について語り合う。

西日本新聞さんのサイトはこちら↓
http://www.nishinippon.co.jp/nlp/book_new/article/164698

4月26日付「京都民報」の書評欄

「「壊憲」に対峙し、語り尽くす」との見出しで、憲法学者中里見博さん(徳島大学)が力のこもった書評をしてくださいました。
中里見さんは冒頭で現状に対する危機感を表明しています。

日本国憲法体制」(戦後レジーム)の否定を掲げる2度目の安倍内閣が発足して2年と数カ月。憲法の息の根を止めようとする政策が次々に打ち出されている。来年ないし数年後の改憲発議も視野に入れられている。他方で、50年代の改憲策動を押し返す原動力となった勢力(ジャーナリズム、知識人、革新政党労働組合など)は今、保守化と無力化が甚だしい。

「そんな異常で危機的な状況の中で放たれたのが本書」だとして、本書の内容を紹介してくださったあと、次のように締めくくっています。

本書の特長は、憲法をめぐる幅広い話題が、法律論に偏らず、また従来の護憲・改憲の枠も超えて深く語られていることだろう。「個人の尊厳」に根ざす立憲主義や九条の意義を明確にし、日本国憲法を高く評価する一方で、少数民族の権利の不在、天皇制の規定、死刑禁止条項の欠如など改正すべき点も語られる。戦後民主主義と平和主義を大切に思う市民にはもちろん、憲法学者にも新鮮な視点に満ちている。
本書はまちがいなく、市民が安倍「壊憲」に向き合うために学びを深める最良の書物といってよい。

憲法学者にも新鮮な視点に満ちている」!
憲法学者の中里見さんにそう言っていただけると心強いです。

出版ニュース』5月上旬号

出版ニュース』誌の書評担当者さんは、まず岡野八代・高橋哲哉両氏の言葉を引いています。

〈「安倍的なもの」とは〉〈彼らの言う、国民に取り戻すとは、おそらくこれもまた二枚舌で、本当に国民の手に主権を取り戻すことなどほとんど考えていない〉(岡野)〈立憲主義そのものが、主権者が政府、国家に対して憲法を守れとどれだけの圧力をかけられるか、最後はそこにくるのではないか〉(高橋)

その上で、本書の論点を要約してくださったあと、「憲法論争に一石を投じる問題提起といえる」と締めくくってくださいました。
記事や書評をご執筆くださった皆さん、ありがとうございました。