白澤社ブログ

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沖縄タイムス紙で『憲法のポリティカ』紹介

高橋哲哉・岡野八代著『憲法のポリティカ』が、6月20日沖縄タイムス紙の読書欄で紹介されました。
評者は法学者の高良沙哉さん(沖縄大学准教授)。
「未来を奪う力に対話で抗う」と題された高良さんの書評は、本書の特徴を次のように指摘しています。

改憲案の根底にある社会的・思想的背景、例えば「個人」を「人」へ書き換えるような一見些末に見える用語の変更に潜む危険などが語られ、われわれが改憲案に対して抱く「違和感」「不気味さ」の正体が、対話を通してあぶり出されていく。そして、集団的自衛権行使容認のための解釈改憲違憲性についても、徹底的に語り合うのが魅力的だ。

そして、岡野さんと高橋さんが「交戦権を認めたのでは憲法13条の個人の尊厳、生命、自由、幸福追求権を侵害するため」と、憲法13条を基準に憲法9条を位置付けている点に着目して、「立憲主義に基づく本質的な議論は明快である」と評してくださいました。立憲主義とは個人の尊厳、生命、自由、幸福追求権を守るために法で政府をコントロールするという発想だからです。
また、沖縄の基地問題について「憲法9条と日米安保体制の矛盾」が問題提起されていることにもふれられていますが、この論点については著者の一人、高橋哲哉さんの新著『沖縄の米軍基地』(集英社新書)が刊行されましたので、そちらにゆずりましょう。
一方で、高良さんは、本書で岡野さんが提起した「マイノリティーの人権やフェミニズムの視点からの議論」についても、「憲法の活用の可能性を感じさせる」と評した上で、次のように締めくくっています。

今この危機的な時代に、憲法状況を明らかにする良書である。本書を通して、2人の研究者と語り合ってみてはいかがだろうか。

高良さん、沖縄タイムスさん、本書の勘どころを的確に紹介してくださいましてありがとうございました。
なお、高良沙哉さんは最近『「慰安婦」問題と戦時性暴力』(法律文化社)というご本を出しておられます。版元の法律文化社さんの同書紹介ページはこちら↓
http://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03641-4