白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

2024年仕事始めのご挨拶

 白澤社は本日(1/5)より通常通りの営業を始めました。

 本年も、人文・思想・社会のジャンルで出版活動に取り組んでまいります。

 イマニュエル・カント生誕300年となる本年は、電子書籍版だけとなっておりました網谷壮介著『カントの政治哲学入門』の紙の本が復活いたします。戦争・紛争が激化するいまこそ必要とされるカント『永遠平和のために』についても第4章で解読しています。

 本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

https://hakutakusha.co.jp/book/9784768479698/

2023年仕事納め

 白澤社は今日が仕事納めです。

 明日から年明け1月4日まで、年末年始のお休みとなります。

 2024年1月5日から平常通りに営業いたします。

 今年は、下記の新刊三点を刊行いたしました。

ひとり親のエンパワメントを支援する | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

戦後思想と日本ポストモダン | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

天狗説話考 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

また、以下の三点の改訂版・新装版も刊行いたしました。

〔改訂版〕イラストで読むキーワード哲学入門 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

愛の労働あるいは依存とケアの正義論〔新装版〕 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

ただ念仏して〔新装版〕 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

 

 白澤社は、来年も今これが面白いと思う本の出版に精いっぱい取り組んでまいります。

 それでは、よいお年をお迎えください。

クリスマスに『ティマイオス/クリティアス』

 今日はクリスマスですね。プレゼントはお決まりですか?

 本もすてきな贈り物になります。

 今年はプラトン著・岸見一郎訳『ティマイオス/クリティアス』をおすすめします。

ティマイオス/クリティアス | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

 表紙カバーにあしらった人物、白いあごひげと赤い衣が、なんとなくサンタクロースに似ていませんか? ラファエロの描いたプラトン(『アテネの学堂』の部分)なんですけれども、その気になってみればサンタクロースにうっすら似ているような気がしませんか。

 このサンタクロース≒プラトンが小脇に抱えているプレゼント(書物)が『ティマイオス』なのです。

 有名なアトランティス伝説も織り交ぜて宇宙の創造や人類の起源を、S・ヴェイユの言葉を借りれば「前キリスト教的直観」によって語った叙事詩のような作品ですが、デミウルゴス(造物神)やコーラー(場)など現代の哲学者(ヨナスやデリダ)も論じる概念が出てきます。

 年越しの読書に、夢もロマンもある『ティマイオス/クリティアス』をぜひ!

異類の会で天狗とクリスマス

 来る12月24日、『天狗説話考』の著者、久留島元さんが異類の会に登場します。

 オンライン(Zoom)開催なので炬燵から出ずに天狗の話を堪能できます。天狗好きの方はぜひ。

異類の会 【異類の会 第139回 12月24日(日)15時オンライン開催】「天狗と修験者」再考(久留島元氏) (zoku-sei.com)

 12月24日と言えばクリスマスイブじゃあないですか。

 クリスマスに天狗では取り合わせが微妙ですが、サンタさんと天狗には、赤ら顔、鼻が高い、空からやってくる、と共通点があります(と強引にこじつけてみる)。もちろん久留島元著『天狗説話考』にはそんなことは書いてありません。

 異類の会で久留島さんは、法蔵館さんから文庫が出た名著『天狗と修験者』(宮本袈裟雄著)の胸を借りてぶつかり稽古という趣向のようです。

天狗と修験者【法蔵館文庫】 - 法藏館 おすすめ仏教書専門出版と書店(東本願寺前)-仏教の風410年 (hozokan.co.jp)

 天狗と修験者とサンタクロース、どんな三題噺になるやら楽しみですね(たぶんサンタの話は出ません)。

天狗説話考 | 白澤社

驚異の大図鑑!『予言獣大図鑑』(文学通信)

クダン狩り | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)』でお世話になった笹方政紀さんからご新著『予言獣大図鑑』(長野栄俊編 岩間理紀・笹方政紀・峰守ひろかず著、文学通信)をご恵贈いただきましたのでご紹介いたします。

 驚異的な大図鑑です。まずは下記サイトで詳細な目次をご覧ください。

長野栄俊編・岩間理紀・笹方政紀・峰守ひろかず著『予言獣大図鑑』(文学通信) - 文学通信 (bungaku-report.com)

 この大図鑑のどこが驚異的かというと、こういうことなのです。

 例えば、目次にある通り、第一「神社姫・姫魚」系には以下の項目が含まれています。

神の姫/八幡宮の神主娘さと/神池姫/姫魚/神社姫(ヘン魚)/神社姫/姫魚/姫魚/肥前国平戸浜より上る神/姫魚/神社姫/神社姫/神社姫/神社姫/神社姫/姫魚/姫魚/姫魚/(参考)姫魚/龍宮の使/(参考)神社姫/(参考)神虵魚/奇魚/異魚/肥後国熊本珍ら敷もの/人魚/(参考)姫魚/熊本の神主山本氏の娘/大神社姫(化魚)/龍神の使(人魚)/(参考)神蛇姫/龍宮之使(異物)/女魚/肥後国熊本海中より上るめづら敷もの/(参考)神蝮媛/(参考)蛇媛/竹駒大明神之神主の娘/竹駒大明神の神主の娘/竹駒大明神の神主の娘/肥後国の神主娘

 神社姫・姫魚とか呼ばれる和式人魚だけで、ざっと数えると、(参考)とされるものも含めて、だいたい40項くらい?あります(老眼なので数え間違っていたらご容赦)。そして、本を開けば人面魚身の和式人魚の絵が延々と出てくるのです。しかも、どれも構図はほぼ同じ、絵に添えられた文章も似たり寄ったり。

 ふつうなら、ふつうはですよ。代表的なものをいくつか選んで詳しくとりあげて、あとは資料名だけ記しておしまいじゃないですか。ところがこの大図鑑は手間も紙幅も惜しまずにあるだけ全部掲載しているのです。

 しかも、しかもですよ。続く第二「件(クダン)」系の次に、第三「くたべ」系の章が独立して設けられている! 

 いやはや、なんというこだわりでしょう。ふつうなら、ふつうはですよ。くたべは件の亜流として、それこそ(参考)程度の扱いとしてしまうところなのに、わざわざ別章を立てるとは、こんなにこだわるのは誰ですか?(見当はついています)。

 第四以降は鳥が続きます。もうこの大図鑑がいかに驚異的なのかはお分かりですよね。第四「奇鳥」系、第五「双頭烏」系、第六「異鳥」系、ふつうなら、「予言する鳥で一括しちゃえば」と思うところなのに、この大図鑑はきっちり分類して、あるだけ全部掲載。こんなことはふつうなら思いつきません。いや、思いついても実行しません。まさに驚異的な大図鑑です。

 以下、第七「アマビコ」系、第八「山童」系、第九「蜑人」系、第十「きたいの童子」系、第十一「豊後国に出で候もの」系とそれぞれこってりと続けた挙句、これだけやればもう十分、いや十二分だろうと思うのに、第十二 その他。その他がありました、恐れ入りました。

 第十二 その他の最後を飾る項目は「天狗」でした。天狗と言えば、小社の『天狗説話考 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)』(久留島元著)もただいま好評発売中です。『予言獣大図鑑』ともどもご愛読ください。

鈴木道彦・海老坂武監修 池上聡一編『竹内芳郎 その思想と時代』(閏月社)

 哲学者の永野潤さんからご新著『竹内芳郎 その思想と時代』(鈴木道彦・海老坂武監修 池上聡一編、閏月社)をご恵贈いただきました。

 下記サイトで目次と編者・池上聡一氏による「まえがき」を読むことができます。

竹内芳郎 その思想と時代 鈴木 道彦(監修) - 閏月社 | 版元ドットコム (hanmoto.com)

大家から新進気鋭まで、錚々たるメンバーが寄稿しています。

 なお発行元の閏月社さんは『竹内芳郎著作集』も刊行されています。

閏月社 刊行書籍のご案内 (jungetsusha.com)

 竹内芳郎(1924-2016)は、今では、みすず書房さんから刊行されているメルロー=ポンティの著作の達意の名訳でしか知られていないかもしれませんが、永野さんや私(ブログ担当者)の学生時代には、サルトル没後、論壇にあいまいな日本的ポストモダンが広がりつつあったムードに抗して、一人サルトルに依拠して果敢な論戦を挑んだ孤高の思想家として、その名は鳴り響いていました。

 永野さん執筆の「竹内芳郎サルトル──裸形の倫理」は、その竹内哲学を知るうえで格好の論文です。さすが、たぶん日本一わかりやすい哲学入門(小社比)『〔改訂版〕イラストで読むキーワード哲学入門 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)』の著者だけあって、構成に工夫が凝らされています。

 なんと、本文より注の方が多い。

 本文は、永野さん自身の竹内芳郎論を、竹内ばりのポレミークな論点も交えつつ、1.自我主義の超克、2.天皇教との闘い、3.裸形の倫理、4.状況の中の思想、という四つのモチーフに注目して、竹内がいかにサルトルを活用したかを中心に、明晰な筆致でぐいぐいと描き出しています。

 これに対して、量的に本文を上回る注には、竹内自身の文章が多く抜粋されてあり、永野さんのセレクトによる竹内サルトル論のエッセンスを示した、いわばミニ・アンソロジーとしても読めるのです。

 また、注の後には、「竹内芳郎によるサルトルに関連する文献一覧」もあって便利。

 読後、今夏、小社から刊行した『戦後思想と日本ポストモダン | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)』での林少陽さんの議論も思い合わされて、現代哲学・現代思想というものについて中長期的な展望を持たないといけないなと感じました。

天狗のお菓子

高尾山のお土産

 いよいよ刊行間近の『天狗説話考』(久留島元著)の成功祈願に高尾山にお参りに行ってきました。関西なら鞍馬山愛宕山に行くところなのでしょうね(詳しくは『天狗説話考』第一章天狗像の形成をご覧ください)。

お土産に天狗のお菓子を買ってきました。

 右上の「天狗の鼻くそ」はココアコーティングしたピーナツ、左上の「烏天狗のたまご」はチョコを包んだクッキー、中央下の「天狗さまのへそのゴマ」は黒豆の甘納豆です。

 いずれも高尾山口のお土産物屋さんで購入しました。

 

山陰の銘菓「伯耆坊」

 下の写真は著者の久留島元さんから陣中見舞いにいただいた山陰の銘菓「伯耆坊」です。

 鳥取県の名山・大山に住まう天狗・伯耆坊の名を冠した「伯耆坊」は、きんつばに似た上品な甘さのお菓子で、美味しくいただきました。

製造・販売元の彩雲堂さんのサイトはこちら↓(白澤社ではお菓子は扱っておりません)

伯耆坊 - 彩雲堂 公式オンラインショップ | 島根県松江市の老舗和菓子お土産専門店 彩雲堂 (saiundo.co.jp)

 ちなみに、鳥取県伯耆大山(ほうきだいせん)に住まう天狗・伯耆坊と、神奈川県の相模大山(さがみおおやま)の天狗は、同じ「大山」だけに、微妙に関係があるようなないような。しかもそこに上田秋成雨月物語』でおなじみの、四国は香川県の白峰で崇徳院の怨霊に仕える「相模」がからんでくると、天狗の怪しいネットワークを夢想してしまいそうですが、そのあたりの謎解きは『天狗説話考』第三章天狗銘々伝をご覧ください。

 久留島元著『天狗説話考』、間もなく刊行です。お楽しみに。

天狗説話考 | 白澤社