白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

本についての本

 今日、11月1日は本の日なのだそうです(知りませんでした)。

本の日って何? | 本の日 (honnohi.com)

 そこで、小社刊行物から本についての本をいくつかご紹介します。

まずは三木清の名著『人生論ノート』を徹底解説したこの二冊から。

三木清『人生論ノート』を読む | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

希望について | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

↓次は親鸞の名著『歎異抄』を近代の知識人たちがどう読んできたか、思想史の大家が解き明かす重厚な一冊。

歎異抄の近代 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

感染症が流行した幕末に緊急出版された『安政コロリ流行記』を現代語訳するとともに、当時の病気観がどのようなものだったかを解説したこの本は、新聞書評でも取り上げられました。

安政コロリ流行記 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

読書の秋本番となりました。よろしくお願い申し上げます。

昨日は「天狗の日」

 昨日10月9日は「天狗の日」だったそうです。

 天狗と言えば、通称大天狗と呼ばれる高い鼻の天狗と鳥のくちばしをもった通称烏天狗があります。最近、文庫化された宮本袈裟雄『天狗と修験者――山岳信仰とその周辺』(法蔵館文庫)によれば、前者を山伏型天狗、後者を鳥類型天狗と分類しています。

 天狗小僧寅吉(平田篤胤『仙境異聞』)の世界を探った今井秀和『異世界と転生の江戸』に登場する天狗は鼻の高い山伏型天狗のようです。

異世界と転生の江戸 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

 しかし、鳥類型天狗、いわゆるカラス天狗もどことなく愛嬌があって憎めません。法蔵館文庫『天狗と修験者』のカバー絵もカラス天狗です。

天狗と修験者【法蔵館文庫】 - 法藏館 おすすめ仏教書専門出版と書店(東本願寺前)-仏教の風410年 (hozokan.co.jp)

 東京都八王子市の高尾山薬王院の天狗のうちわに描かれているのは鼻高の山伏型天狗ですが、本尊としてまつられている飯縄権現(いづなごんげん)はカラス天狗の姿をしています。

高尾山薬王院境内の飯縄権現堂】

この石仏は現・日野市から飛んできたとの伝説から「飛飯縄」との異名を持つ。

 

 白澤社では只今たいへんおもしろい天狗の本を編集中です。刊行のめどが立ちましたら、またあらためてお知らせします。お楽しみに。

岡本綺堂による関東大震災の被災記――『江戸の残映』

今日は防災の日関東大震災(1923)から百年目にあたります。

小社刊『江戸の残映――綺堂怪奇随筆選』(岡本綺堂著・東雅夫編)には、「綺堂怪談誕生の一契機となった関東大震災の被災記」四編が収録されています(東雅夫「編者解説」より)。

その初出を下記に挙げておきます。

震災の記  初出・『婦人公論』大正十二年(一九二三)十月。

地震雑詠  初出・底本・「木太刀」第二十一巻第十号、「木太刀」社、大正十二年十一月五日発行。

焼かれた夜  初出・底本・「木太刀」第二十一巻第十一号、「木太刀」社、大正十二年十二月五日発行。

十番雑記  初出・大正十二年(一九二四)十二月執筆、後『思い出草』昭和十二年刊に収録。

このうち「震災の記」の書き出しをご紹介します。

 なんだか頭がまだほんとうに落着かないので、まとまったことは書けそうもない。

 去年七十七歳で死んだわたしの母は、十歳の年に日本橋安政の大地震に出逢ったそうで、子供の時からたびたびそのおそろしい昔話を聴かされた。それが幼い頭にしみ込んだせいか、わたしは今でも人一倍の地震ぎらいで、地震と風、この二つを最も恐れている。風の強く吹く日には仕事が出来ない。少し強い地震があると、又そのあとにゆり返しが来はしないかという予覚におびやかされて、やはりどうも落着いていられない。

この機会に是非ご一読ください。岡本綺堂著・東雅夫編『江戸の残映――綺堂怪奇随筆選』は好評発売中です。

江戸の残映 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

 

林 少陽『戦後思想と日本ポストモダン』刊行

残暑お見舞い申し上げます

猛暑、いや酷暑の続く今年の夏、このブログも夏バテ気味でしたが、このたび秋の読書シーズンに向けて新刊を刊行しましたのでお知らせいたします。

[書 名]戦後思想と日本ポストモダン

[副書名]その連続と断絶

[著 者]林 少陽

[頁数・判型]四六判上製、264頁

[定 価]3000円+税

ISBN978-4-7684-7998-8 C0010 ¥3000E

著者略歴や目次につきましては小社ホームページをご覧ください。

https://hakutakusha.co.jp/book/9784768479988/

本書は三部構成。

日本的ポストモダンの功罪を丸山眞男に代表される戦後思想との連続と断絶に焦点をあてながら指摘する第一部は、80年代90年代の日本の「現代思潮」を概観するうえでも有益な示唆に富んでいます。第二章には山口昌男網野善彦前田愛が登場。

カント平和論が戦後日本知識人に与えた影響をたどりながら柄谷行人におけるカントへの移行を論じる第二部では、F・フクヤマ『歴史の終わり』が日本のポストモダン派にどのように受け止められたのかも。

第三部では柄谷を日本の現代思想の代表者として位置づけ、その最近の思想の特徴を歴史性への回帰として描き出し、東アジアの視点から総括する。

キーワードは「悔恨の共同体」から「世界史の構造」へ。

 

岡本綺堂「四谷怪談異聞」(東雅夫編『江戸の残映―綺堂怪奇随筆選』所収)

今日、7月26日は鶴屋南北東海道四谷怪談』初演の日というご縁で「幽霊の日」なのだそうです。

四谷怪談と言えば小社では『実録四谷怪談―現代語訳『四ツ谷雑談集』』(横山泰子序、広坂朋信訳注)を出しておりますが、今回は別の一冊をご紹介いたします。

岡本綺堂の怪奇趣味溢れる随筆を集成した東雅夫編『江戸の残映―綺堂怪奇随筆選』には、「四谷怪談異聞」が収録されています。

江戸の残映 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

南北の芝居の原型となった四谷怪談とは、もとは四谷左門町に住む幕府御家人の夫婦についてのゴシップに過ぎなかったものが同時代の噂話を吸収して長編怪談にふくれあがったものと考えることもできます。

幕府御家人だった父を持つ岡本綺堂の「四谷怪談異聞」は世間で知られている怪談とは異なる美談ヴァージョンのお岩伊右衛門物語を伝えています。

怪談か美談か、兎もかくも一説として掲げて置く。勿論、南北翁の傑作に対して異論を挟さむなどと云うわけでは決して無い。(東雅夫編『江戸の残映―綺堂怪奇随筆選』、168頁)

猛暑の夜に冷やした茶などを召し上がりながらご一読ください。

 

『図書新聞』で『愛の労働』紹介!

図書新聞』2023/7/29付(3601号)で『愛の労働あるいは依存とケアの正義論〔新装版〕』(エヴァ・フェダー・キテイ著・岡野八代・牟田和恵監訳)が紹介されました。

政治学者の五野井郁夫さんが、『図書新聞』恒例の2023年上半期読書アンケートの一冊として挙げてくださいました。

図書新聞ブログ |3601号目次 (fc2.com)

五野井さんは本書を「ケア倫理の名著」と紹介してくださったうえで「公正でケアのある社会の構想は、こんにちの社会が最も必要としている指針である」と書いてくださいました。

五野井さん、ありがとうございました。

愛の労働あるいは依存とケアの正義論〔新装版〕 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

好評発売中です


岩波書店さんの月刊誌『世界8月号』に広告を出しました。

『世界8月号』の特集は「安倍政治の決算」。気鋭の政治学者、法学者、社会学者の論考がずらりと並んでいます。

『世界』誌のサイト↓

WEB世界 (iwanami.co.jp)

『世界8月号』掲載の小社広告のラインナップは次の二冊です。

愛の労働あるいは依存とケアの正義論〔新装版〕 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

〔改訂新版〕事実婚と夫婦別姓の社会学 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)

 

障碍者・高齢者へのケアの充実と選択的夫婦別姓の実現は8年以上の安倍政権で無視され続けてきた課題です。

『世界』誌ともどもご一読ください。