日本民俗学会『日本民俗学302』の書誌紹介欄で『異世界と転生の江戸――平田篤胤と松浦静山』(今井秀和著)が紹介されました。
評者の飯島吉晴さん(天理大学名誉教授)は、異界や子どもにまつわる民間信仰の研究で知られた民俗学者で、『竈神と厠神』(講談社学術文庫)、『一つ目小僧と瓢箪』(新曜社)などの著作があります。今井秀和さんの『異世界と転生の江戸』の評者としてはうってつけの方です。
『日本民俗学302』144頁から一部抜粋させていただきます。
まず飯島さんは本書の大きな特色を明確に描いてくださいました。
「本書では、『仙境異聞』と『勝五郎再生記聞』を登場人物の全人生を生前や死後も含めて可能な限りたどり、同時代の知識人や一般庶民の異世界や奇聞への態度、時代背景や和漢の文献の影響などトータルに検討している点に大きな特色があり、そこに魅力がある。」
そのうえで、本書の通奏低音のように繰り返し言及される謎を指摘。
「とくに、平田篤胤と松浦静山という二人の同時代の知識人の差異と接点がそのメインテーマであり、同じように奇事異聞に関心を持ち記録する二人の直接面談と文書伝達という姿勢の差異は一体どこに由来し、その背後にはどのような政治力学が働いていたのか興味は尽きない。」
そして次のようにしめくくってくださいました。
「知らない知識を得るのは読書の醍醐味であるが、本書は学術書らしく記述は論文調の固い印象が残るが、同時に思わず引き込まれそうな魅力にあふれている作品である。」
飯島吉晴さん、ありがとうございました。
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ぜひ書店に足を運んで、本書を手に取ってみてください。