先週末からマスメディアはイギリスのEU離脱のニュースでもちきりですね。
今日のニュースでは、アメリカの大統領候補の一人が自分が当選したらTPPから離脱すると表明したそうです。
自由主義の発達による世界市場の形成によって圧迫された国民の立場において世界主義に反対する国民主義が唱えられ、それはやがて自由主義を否定する権威主義の思想にまでなった。
引用したのは今朝の新聞の社説からではありません。三木清が1941年に執筆した「自由と自由主義」の終わりの方にある文です(『三木清全集第七巻』岩波書店、479頁)。
自由主義をネオリベラリズム、世界市場をグローバル市場、世界主義をグローバリズム、国民主義をナショナリズムと置き換えれば、こんにちでもそのまま通じそうです。
このたび小社から刊行しました、岸見一郎著『三木清『人生論ノート』を読む』の「はじめに」で、岸見一郎さんは「三木の言葉がいまの時代にも通じる問いを投げかけている」と書いていますが、まさかこんなところまで似てくるとは泉下の三木清もびっくりでしょう。
三木が亡くなってから70年以上の歳月がたったわけですが、「進歩がないね」と草葉の陰で苦笑いしているかもしれません。