白澤社ブログ

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嫉妬にかられたことはありますか?──『人生論ノート』の言葉から4

「嫉妬こそベーコンがいったように悪魔に最もふさわしい属性である。なぜなら嫉妬は狡猾に、闇の中で、善いものを害することに向って働くのが一般であるから。」

三木清『人生論ノート』の「嫉妬について」の冒頭の段落にある言葉です。
三木清「人生論ノート」を読む』の岸見一郎さんも言っておられますが、三木さんは嫉妬という情念についてまったく容赦ありません。

「嫉妬には天真爛漫ということがない。愛と嫉妬とは、種々の点で似たところがあるが、先ずこの一点で全く違っている。即ち愛は純粋であり得るに反して、嫉妬はつねに陰険である。」

嫉妬は、さまざまな人間関係において生じますが、とくに恋愛感情のからむ人間関係のなかで多くみられるようです。
夫も子どももいる女性が、あるサークルのメンバーの男性と仲良くなり、あたかも自らが女王の如く振る舞うことで彼を「従僕」として扱い、「従僕」の側は、愛されていると(たぶん)勘違いして女王様に従う。現実にそんな女たちや男たちがいます。その「従僕」に触れる者がいると、女王様は嫉妬の嵐で攻撃をかける。嫉妬に駆られると事実などどうでもよく、自らの妄想の世界にいますから、その人を排除するためにありもしない事を周りに広めます。信じるほうも信じるほうだと思いますが、大体において陰口ですから、陰湿ですよね。
三木さんは、嫉妬と愛を比較しながら論じ、嫉妬ほど「不生産的な情念の存在を私は知らない」と言い切ります。
では、どうすれば嫉妬心をなくすことができるのでしょうか。

「嫉妬からは何物も作られない。人間は物を作ることによって自己を作り、かくて個性になる。個性的な人間ほど嫉妬的でない。個性を離れて幸福が存在しないことはこの事実からも理解されるであろう。」

三木清「人生論ノート」を読む』の著者・岸見一郎さんは、次のようにまとめてくださっています。

 物を作ることで自己を作り、それが個性になるというのが、三木のアドバイスでした。これ以上の答え、何をどのように作るのかということまで、他人の指示をあおいで、その通りにしたとして、個性も自信も生まれないでしょう。
 何を作るのか、どのように作るか、それを自分に問いかけ、考え、試行錯誤することのなかから個性も自信も生まれてくるものだと思います。


やはり「自己を作る」ことが大切なようです。自分が嫉妬にかられないように、胆に命じたいところです。
嫉妬と愛、人の悩みは尽きませんね。
Webでは詳しく語れませんので、『三木清「人生論ノート」を読む』をぜひお読みください。

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