白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

『葛藤するシティズンシップ』刊行

このたび白澤社では、『葛藤するシティズンシップ――権利と政治』を刊行しました。
[ジャンル]社会、政治
[書 名]葛藤するシティズンシップ
[副書名]権利と政治
[編著者名]木前利秋・時安邦治・亀山俊朗
[体 裁]四六判並製、208頁
[定 価]2100円+税
[ISBN]978-4-7684-7945-2
発行:白澤社
発売:現代書館

連休明けには、全国主要書店に配本される予定です。シティズンシップ論のもっともアクチュアルな面を示す共同研究の成果です。

本書の内容

市民的権利と社会的権利、格差社会や不平等、人間の権利と公民の権利、承認と再分配、文化的多様性など、現代の政治、経済、社会、文化の各場面で起きているさまざまな葛藤を、民主主義理解の基礎概念であるシティズンシップの視点から捉え直し、あるべき道を探る。

本書は、同じ編著者名で白澤社から公刊した『変容するシティズンシップ』の続編にあたる論文集である。といっても前著をたんに補完する姉妹編というのではない。『葛藤するシティズンシップ』という題が物語るように、同じシティズンシップ論といっても、扱ったテーマが異なる。シティズンシップ論に興味を持たれた方は、機会があれば前著も是非、手にしていただきたいが、本書に目を通した読者は、前著を知らずともその内容を十分に理解できるだろう。
「葛藤」という言葉には、シティズンシップ論にたいするわたしたちなりの新たな視点の導入という意味が込められている。もちろん正確に何をもって「葛藤」と呼ぶのか論者によってニュアンスや意味の相違があるので、詳しくは序と本論での議論にあたってほしい。ただ、どちらかといえば、社会の政治的な対立や葛藤とは縁の薄いと思われるシティズンシップの概念に、むしろ政治・経済・社会、さらには文化上の対立、緊張関係などさまざまな葛藤要因がはらまれており、それがシティズンシップをめぐるより本質的な問題状況をもたらしているのではないかというのが、わたしたちの立てている仮説であり共通の視点である。
(「あとがき」より)

目次から(カッコ内は執筆者)

序 再定義されるシティズンシップ (亀山俊朗)
第1章 近代的シティズンシップの成立と衰退 (亀山俊朗)
第2章 リスクとシティズンシップ――「格差社会」における不確実性 (表 弘一郎)
第3章 近代的諸権利の成立条件――最初期マルクスの理論的模索 (木前利秋)
第4章 集団別権利と承認/再分配 (時安邦治)
第5章 多文化的シティズンシップ――キムリッカのリベラル平等主義の構想をめぐって (時安邦治)

執筆者略歴(執筆順)

  • 亀山俊朗(かめやま としろう)* 〔序、第1章〕

1962年生まれ。お茶の水女子大学キャリア支援センター准教授、専攻は社会学(社会理論・社会政策論)。
著書に、共著『社会的排除/包摂と社会政策』(福原宏幸編、法律文化社)、共著『フリーターとニート社会学』(太郎丸博編、世界思想社)など。

  • 表 弘一郎(おもて こういちろう) 〔第2章〕

1970年生まれ。中部大学・大阪経済法科大学非常勤講師、専攻は社会思想史・社会理論。
著書に、共著『古典から読み解く社会思想史』(中村健吾編、ミネルヴァ書房)、論文に「アドルノにおける観相学と『社会』への問い─ホネットとボンスの解釈を踏まえて─」(『アリーナ』第12号)など。

  • 木前利秋(きまえ としあき)* 〔第3章〕

1951年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科教授、専攻は社会思想史・現代社会学。
著書に『メタ構想力』(未來社)、論文に「ヴェーバーとモダニティ論の新たな地平」『思想』No.987.など。

  • 時安邦治(ときやす くにはる)* 〔第4章、第5章〕

1967年生まれ。学習院女子大学国際文化交流学部教授、現代文化論・社会思想。
著書に、共著『社会学ベーシックス第9巻 政治・権力・公共性』(世界思想社)、『社会学ベーシックス第7巻 ポピュラー文化』(世界思想社)、共訳M・フェザーストン『ほつれゆく文化』(法政大学出版局)。