白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

2013年の仕事納め

白澤社は今日が2013年の仕事納めとなります。
今年も一年間、さまざまな方々のお世話になりました。ありがとうございました。
とりわけ小社の本を読んでくださった皆様には、篤く御礼を申し上げます。
この一年を振り返るといろいろなことがありました。
『変容するシティズンシップ』『葛藤するシティズンシップ』の編者・木前利秋先生のご逝去という悲しい報せもありましたが、楽しかったこと、嬉しいニュースもありました。
このブログで触れなかった事柄をいくつか挙げてみます。
8月には、『リスク社会の授業づくり』の著者・子安潤さんが日本教育学会大会(一橋大学)での「公開シンポジウム 原発事故・放射能被災を学校教育はどう受け止めるか」に登壇。なお同大会では『シティズンシップの教育思想』の著者・小玉重夫さんも活躍されていました。
11月には、『雑木林の決意』の著者・河原井純子さんが教員として勤めていた都立七生養護学校(現・七生特別支援学校)の性教育実践へ不当介入した都議らに対する賠償命令が最高裁で確定しました。河原井さんはご自身の君が代不起立訴訟でも勝訴しているので、ひそかに勝利の女神と呼んでいます。
そして今日、12月27日の東京新聞朝刊を開くと、なんと小社刊行物の著者が二人も登場しているではありませんか。
『反・哲学入門』『殉教と殉国と信仰と』の高橋哲哉さんと、『極楽の人数』『市民的自由の危機と宗教』『ただ念仏して』などの菱木政晴さんです。菱木政晴さんは『殉教と殉国と信仰と』の共著者でもあります。
お二人とも靖国問題の論客で、昨日の首相参拝についてのコメントを求められたのでした。
高橋哲哉さんの談話については、ベストセラー『靖国問題』(ちくま新書)や『国家と犠牲』(NHKブックス)などもありますし、小社の『殉教と殉国と信仰と』でも委曲を尽くして語っておられることですので、ここでは菱木政晴さんのコメントをご紹介します。
以下、東京新聞2013年12月27付朝刊「こちら特報部」の「戦争できる国への布石?」と題された記事より該当箇所を引用します。

同朋大学大学院の菱木政晴特任教授(宗教哲学)も「靖国は単に戦死者追悼施設ではなく、戦死者を褒めたたえる施設であることを考えるべきだ」と指摘する。
靖国は「国家のために一命をささげられた方々を慰霊顕彰する」ための神社だが、菱木氏は「この顕彰は、戦死を善行とし、国のために死んでくれてありがとう。次の戦争で死んでいく人たちの模範になってください」という意味だと話す。
靖国は国民に戦争参加を、遺族には家族の戦死を納得してもらうための装置だ」と断じ、「改憲国防軍を創設する第一歩ではないか。首相の靖国参拝を当たり前にし、集団的自衛権行使を容認しようとしている」と指摘した。

菱木さんと言えば、今年、『実録四谷怪談』と『翻訳がつくる日本語』を刊行したあとだったので秋ごろだったかと思いますが、突然お電話をいただきました。
ご病気で入院されていたそうですが、すっかり快復したので一杯やらないかというお誘いでした。快気祝いの席でうかがったのは、病床のベッドで小社の『死霊解脱物語聞書』(小二田誠二解題・解説)を読みふけっていたとのこと。
ちなみに菱木さんは真宗大谷派の僧侶でもあります。その菱木さんに「いやあ、面白かった」と誉めていただいたのは何よりの喜びでした。
そんなこんなで悲喜交々の一年でしたが、来年もどうかよろしくお願いいたします。
年明けは1月6日より通常営業を始めます。
よいお年をお迎えください。