白澤社ブログ

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「人形の趣味」収録の建前――『江戸の残映』編集こぼれ話

さて、このたび白澤社より刊行いたしました、東雅夫さんの編になる岡本綺堂随筆選は『江戸の残映――綺堂怪奇随筆選』と銘打ちました。

早くもご一読下さった読者は御承知でしょうが、江戸懐古、または怪奇趣味に溢れる作品の並ぶなか、一編のみ、江戸とも怪奇とも関係のなさそうな作品が収録されております。

「人形の趣味」がそれです。

これは著者の岡本綺堂が人形を偏愛し収集していたこと、編者の東雅夫さんが人形愛好家であること、そしてこれはどうでもよいことですが担当編集もぬいぐるみの愛好者であることから、この一編を本書に収録したというのが本音のところです。

とはいえ、本音があれば建前もあり、建前というものは案外おろそかにしてはならないものであります。

それでは、「人形の趣味」が本書に収録された建前は何かといえば、綺堂怪談のなかでもかなり怖い(当社比)部類に入る「河鹿」(双葉社刊『岡本綺堂怪談文芸名作集』所収)、そして、ご存知『半七捕物帳』シリーズ(光文社文庫)の中でも怪奇趣味の色濃い「人形使い」(他にも「張子の虎」や「菊人形の昔」もあります)、こうした作品を鑑賞するうえで綺堂の人形愛を知っておくことは有益であろうという、それなりの建前もあるにはあるのです。

なお、白澤社の新刊『江戸の残映――綺堂怪奇随筆選』(東雅夫編・岡本綺堂著)は、絶版本でも、希少本でも、倒産した出版社の本でもありません(まだ倒産していません)。全国の主要書店で税込定価2860円でお取り扱いいただいております。

店頭に見当たらなければ書店さんを通してご注文ください。

江戸の残映 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)