白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

ひな祭りに牡丹灯籠?

もうすぐ桃の節句、ひな祭りですね。
ひな祭りにふさわしい本をおすすめしたいと社内で提案したら、『〈江戸怪談を読む〉牡丹灯籠』がいいということになってしまいました。
はあ?ひな祭りに牡丹灯籠?
何を考えているのでしょうね。
とはいえ、よく考えてみればまったく縁がないわけでもありません。
皆様よくご存じの円朝口演『怪談牡丹燈籠』では、お露の亡霊には、牡丹の灯籠をもったお米が付き添っています。
円朝落語のお米は、お露お嬢さまのお世話係の亡霊で、見た目はやや年かさの設定です。
ところが、落語の原典へさかのぼって浅井了意『伽婢子』所収の「牡丹灯籠」では、このお米に相当する登場人物は、浅茅という名の「十四五ばかりの女の童」で、この浅茅の正体はなんと!人形なのです。
女の子の人形、ひな人形、ひな祭り、ということで、『〈江戸怪談を読む〉牡丹灯籠』を、えいやっと気合いでお薦めします。
さらに、『〈江戸怪談を読む〉牡丹灯籠』には、ひな人形にふれた箇所があるのでした(すみません、今思い出しました)。
円朝口演『怪談牡丹燈籠』にまつわる幕末のゴシップを紹介した第八章「深川北川町の米屋の怪談」に、二間続きに飾ったという豪華なひな飾りの話が出てきます。
これぞまさしく本書『〈江戸怪談を読む〉牡丹灯籠』がひな祭りにふさわしい本である証拠です!

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