こう寒い日が続きますとやはり鍋物がありがたいですね。今夜の夕食に鴨鍋はいかがでしょうか。
『新選百物語』巻五の「鳬におどろく五人の悪者」に、権九郎という男が狐のくわえた鴨を横取りして「ねふかを求めて吸物こしらへ」とあるのをヒントに考えてみました。
鳬は鴨。「ねふか」は長ネギのことで、鴨といえばネギが欠かせません。
「吸物こしらへ」というからには、おそらく味噌や醤油は使わず、塩味のすまし汁に仕立てたのでしょう。
ネギをたくさん使った塩味の鶏鍋というイメージで作ってみました。
・材料(分量はすべて「適量」ということで)
鴨肉(今回はロース薄切り肉を使いました)
長ネギ
鶏肉団子(鴨肉だけだと高くつくので、こっそり入れてあります)
白菜(江戸時代的には反則ですが、美味しいのでこっそり)
豆腐
舞茸(出汁を取るのに使いました)
昆布(同上)
椎茸(飾りです)
セリ(写真ではいろどりに春菊を使っていますがたぶんセリの方が合います)
酒
塩
・作り方
一、今回は煮込むので土鍋を使います。鍋に水をはり昆布と舞茸で出汁をとります。めんどくさい時は市販の白だしでもいいかもしれません。
二、沸騰したら鶏肉団子(鳥ブツでも可)と白菜、長ネギの白い部分を煮ます。
三、酒と塩で味付けしたら火を弱め、豆腐、椎茸、セリなどを入れ、そのうえに鴨肉を置いてひと煮立ちさせます。
四、仕上げに長ネギの青い部分を入れて出来上がりです。
☆ワンポイント☆
写真では煮込む前なので鴨肉が生煮えですが、鴨肉からは味と脂が出ますからしっかり煮込んだほうが美味しいように思います。
狐から横取りした鴨を食べた権九郎たちがどうなったかは、『新選百物語―吉文字屋怪談本 翻刻・現代語訳』(監修=篠原進/翻刻・注・現代語訳=岡島由佳/コラム=堤邦彦・近藤瑞木)で読むことができます。