小社刊『カントの政治哲学入門──政治における理念とは何か』(網谷壮介著)が、2018/3/11付 信濃毎日新聞読書面で紹介されました。
「理念に基づく国家 必要性訴え」との見出しの躍る書評を執筆してくださったのは立命館大学の山本圭准教授。
山本さんは『不審者のデモクラシー ラクラウの政治思想』(岩波書店)などのご著書で知られる政治学者です。
以下、本件の特殊性に鑑み、要点を抜粋してご紹介します。
カントの政治哲学の現代性にせまる稀有な入門書
この書評で山本さんは、政治とは「国の予算を決めることや、日々新しく生じた課題の解決に向けた立法」だけではなく、「それを通じて何某かの理念を実現していく、そのような長期的な共同プロジェクト」でもあるはずだと説きおこし、「政治における理念の必要性を徹底して考え抜いたその人こそ、イマニュエル・カント、本書の主人公」だとします。
本書はカントの「政治哲学」の入門書である。「政治哲学」とは一般に、自由御や平等、正義や暴力、さらには政治体制など、いわび政治的な諸概念について哲学的に問うものだ。とはいえ、じつのところ、カントの思想は「政治哲学」としてはあまり読まれてこなかった経緯がある。そのようななか、本書は、近年の研究成果を取り入れつつ、カントの政治哲学の現代性にせまる稀有な入門書となっている。
カントの政治哲学のエッセンスを平易に叙述
次に山本さんは、本書の各章のテーマをたどり「カントの政治哲学のエッセンスが平易に叙述」されているとしたうえで、次の点に注目します。
とりわけ眼を引くのは、カントの描く共和制である。カントは普遍的な法のもとで、万人の自由が両立する国家のあり方を「共和主義」と呼ぶ。このような理想的な政治体制へむけた漸進的なあゆみこそ、政治の役割として提示されるのだ。