白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

『教育』で『よい教育とはなにか』が紹介されました


『教育』(2016年9月号)の書評欄に、ガート・ビースタ著、藤井啓之・玉木博章訳『よい教育とはなにか』の書評が掲載されました。
版元かもがわ出版さんの紹介ページはこちら↓
http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ka/201609_848.html
評者は、神代健彦先生(京都教育大学)で、「優しいニヒリズムに訣別」と題して詳しく論評してくださいました。
以下に、前半のさわりの部分をご紹介します。
こんな印象的な書き出しではじまります。

「よい教育とはなにか」―終わりのないこの種の議論は、わたしたちをひどく消耗させる。舞い降りる、優しいニヒリズム


ここでいう「優しいニヒリズム」とはなにか。
それは、「苦しみを手放しなさい、そんな問いには答えも益もないのだから」、「知性には幸せな眠りを許し、現実にすべてを委ねなさい」etc…といった、教育者が「現実と折り合いをつけた「大人」になる」ための自己欺瞞の言葉でした。

本書がそんなニヒリズムに抗する努力であることは間違いない。人々から「よい教育」をめぐる思考を奪う、教育の技術の支配。しかし技術合理性は、わたしたちの知性の後見人ではありえない。教育テクノロジーがどんなに卓越化しようと、そこには常に「その卓越はなんのため?」「その技術の先に、どんな「よい教育」を見るのか?」という、わたしたちがみずから共同的に考えざるをえない価値の問いが残されるからである。本書は、そんな問いを問うための勇気と語彙とを、わたしたちに与えてくれる。

このあと、神代さんは本書各章の論点を、ご自身の視点から読み解きながらていねいに本書の全体像を紹介してくださいました。
書評は「価値ある面倒くささを生きることができるかがいま、問われている」という文で結ばれています。
すてきな書評を書いていただき、ありがとうございました。
掲載誌をご恵贈くださった教育科学研究会『教育』編集部様にも御礼申し上げます。