白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

いま何ページ目?――岸見一郎『三木清『人生論ノート』を読む』編集こぼれ話

「どうですか?」
「いいですね、やりましょう!」
即決で三木清『人生論ノート』に取り組むことになった岸見一郎さんと小社は、さっそく『人生論ノート』の本文の検討をはじめました。
この打ち合わせは、三木清の文章を一段落ごとに読み上げながら行なわれました。
三木の文章を一つ一つ確認しながら、不明点・問題点はどこかを洗い出し、どう理解するか、どのようなコメントをすべきかなどを話し合いました。
根気のいるやり方ですが、岸見さんも小社も学生時代の演習や読書会を思い出しながら楽しく取り組みました。

ところがそこで大問題が発生したのです。
「そこのところにモンテーニュが出てきますよね」
「ええと、そこのところってどこですか?」
「ですからその段落の終わりのあたりです」
「ああ、次のページですね」
「いえ、同じページですけれど…」
「アレ?いま何ページ目ですか?」
「アレレ?そこ何ページですか?」
二人とも同じ新潮文庫版『人生論ノート』を読んでいるはずなのに、頁数が違っていたのです!
これにはちょっと驚きました。
奥付を確かめると、最近刊行された方は「平成二十三年十月五日百五刷改版」となっていて、この時に一頁あたりの文字数が変わったため、同じ新潮文庫でもそれ以前に発行されたものとそれ以後のものとでは頁数が少しずつずれたようです。
それのどこが大問題か?
引用にあたって頁数を示すだけでは、読者によっては百五刷以前の版をお持ちの方も大勢おられるでしょうからどうしても混乱が起きます。
そこで小社の『三木清『人生論ノート』を読む』では、取り上げた箇所については各章末に全文を掲載することにいたしました。
例えば、本書の「2幸福と成功」の章の後には、三木清『人生論ノート』から「幸福について」と「成功について」が抜粋収録されています。
三木の華麗なレトリックをご堪能ください。