白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

「福島民報」で『憲法のポリティカ』紹介

高橋哲哉・岡野八代著『憲法のポリティカ』の書評が出ました!
福島民報」4月18日付の書評欄です。
評者は憲法学者の村田尚紀さん(関西大学教授)で、「変革の立場で護憲論」という見出しで、本書のポイントを的確にとらえて評してくださいました。

「哲学者と政治学者の対話」というサブタイトルは、堅苦しい印象を与えるかもしれない。確かにプラトンやカント、現代の哲学者、社会学者の名前も出てくる。しかし、その方面に不案内な読者でも、扱われる具体的な問題や言説と向き合いながら、両氏とともに思考する面白さを味わえるであろう。

そうなんです。「思考する面白さ」こそ本書の特色です。
さらに村田さんは「問題意識を共有するとはいえ、両氏の独自の思考プロセスは当然、結論に微妙な差異をもたらすこともある」と指摘されていますが、だからこそ、一つの結論を読者に押し付けるのではなく、高橋さんと岡野さんの、時々微妙にすれちがうこともある対話に読者も参加することができる、そういう面白さを浮かび上がらせてくださいました。
「しかし、あえていえば、両氏の結論は「護憲」」なのですが、まさに「あえていえば」であって、高橋さんと岡野さんの議論は「戯画化された教条的な「護憲」とは違う」ところに向かっていきます。

国民の思考停止をもくろむ改憲派に抗し、思考することの重要性を訴える両氏は、憲法を無条件に支持することをも拒否する。その上で、例えば君主を頂く民主制という象徴天皇制の矛盾や、排除の論理と化しうる国民主権の危険性などを率直に指摘し、場合によっては本来の意味の憲法改正の可能性も認めつつ、護憲を訴える。

村田さんはこのように本書の勘どころを指摘してくださった上で、「読者は、レジスタンスとしての思考の在り方を鮮やかに示す対談の豊かなメッセージを自らの思考のフィルターにかけて受け止め、行動することが求められている」と結んでいます。
レジスタンスとしての思考の在り方を鮮やかに示す対談」!
宣伝文句に使いたいくらいです。
村田尚紀さん、ご高評、ありがとうございました。