白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

「ふぇみん」で『菅野スガ再考』紹介

2014年9月15日付「ふぇみん」紙の書評欄で、小社刊、関口すみ子著『菅野スガ再考』が紹介されました。

以下、該当箇所を引用します。

アナーキストらが明治天皇の暗殺を企てたというフレームアップにより幸徳秋水ら12人が処刑となった「大逆事件」は、明治期の一大思想弾圧事件だった。敗戦後には、冤罪の事実が知られたが、一方で、処刑者中、唯一人の女性だった菅野スガに対しては現在に至るも「妖婦」説が根強い。
スガは入獄前、幸徳秋水との自由恋愛、同居によって、既に周囲から「妖婦」の非難を浴びた。また、以前の事実婚の相手、荒畑寒村は「放縦淫逸な生活に沈湎して…男と浮名を流す…」と戦後、自伝でこの妖婦説を定着させた。
本書は当時の新聞や処刑前の日誌などを検証し、男たちのまなざしからではなく、生身の全身像をすくいだすことで、妖婦説への疑義を試みたものである。そこには新聞記者として公娼設置に反対の論陣を張り、キリスト教婦人矯風会の活動家であり、しかしそれではあきたらないかのように「革命家」へと一気に跳んだ稀有な女性の姿が浮かんでくる。(束)

束さん、ありがとうございました