白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

『アドルノの社会理論』

このたび白澤社では、表弘一郎著『アドルノの社会理論』を刊行しました。

概要

書 名:アドルノの社会理論
副書名:循環と偶然性
著 者:表弘一郎
体 裁:四六判上製、288ページ
本体価格:3,000円+税
ISBN978-4-7684-7952-0 C1010

内容説明

グローバル化と個人化が進行するリスク社会状況において「社会とは何か」という問いはいかなる意味をもつのか。

…「社会」は苦しみに覆われながらも、同時に自由の可能性をともなう、二律背反の状態にある領域なのだ。こうした「社会」の変容可能性が、苦しみの克服と自由を呼び戻す可能性の在りかがいま問われている。(本書「まえがき」より)

『否定弁証法』の哲学者、現代音楽の理論家、鋭い社会批評家など、多彩な顔を持つ社会哲学者Th.W. アドルノ(1903-69)。2003年の生誕100年以後アドルノ思想の再検討と再評価は著しく進展し、その社会理論研究もまた新しい局面を迎えつつある。
本書は、日本では十分に知られていないアドルノの社会理論の全体像を現代的文脈から再構成し、哲学と社会学の境界領域に新しい照明を当てるとともに、ヴェーバー社会学とデュルケム社会学との関係、九鬼周造の偶然性の哲学との対比など、大胆な問題設定による分析を通じてアドルノ思想の現代的意義を明らかにする。
この社会が別様でありうる可能性を描く理論としてアドルノ社会理論を検証する気鋭の論考。

目次

序論 「社会の消滅」とアドルノ社会理論
第1章 アドルノ観相学と「社会」への問い
第2章 異なる合理性を求めて--アドルノによるヴェーバー
第3章 社会と個人との媒介不可能性の位相--アドルノによるデュルケム
第4章 理解可能性と理解不可能性との循環
第5章 アドルノにおける国家・ネイション・社会
第6章 苦しみと社会的なもの--「社会的なものの死」以後のアドルノ
第7章 偶然性と社会理論--九鬼周造アドルノ
結語

著者プロフィール

表 弘一郎(おもて こういちろう)
1970年大阪府生まれ。2003年大阪市立大学大学院経済学研究科後期博士課程修了、博士(経済学)。現在、同志社大学嘱託講師、中部大学・大阪経済法科大学非常勤講師。専門は社会思想史、社会哲学、偶然性とリスクの社会理論。
著書に『〈共生〉の哲学──リスクによる排除と安心の罠を超えて』(耕文社)、共著『葛藤するシティズンシップ──権利と政治』(木前利秋・亀山俊朗・時安邦治編、白澤社)、共著『古典から読み解く社会思想史』(中村健吾編、ミネルヴァ書房)ほか。論文に「偶然性とリスクのあいだ─社会哲学のある課題─」(中部大学人文学部研究論集第29号)、ほか。