白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

『「慰安婦」問題の解決に向けて』を刊行

このたび白澤社では、『シンポジウム記録 「慰安婦」問題の解決に向けて』を刊行しました。
2012年3月10日、同志社大学において開催されたシンポジウムの記録です。

[ジャンル]社会、政治
[書名]シンポジウム記録 「慰安婦」問題の解決に向けて
    ──開かれた議論のために
[編者]志水紀代子・山下英愛
    パネリスト(執筆者)=鄭柚鎮/花房恵美子/和田春樹/岡野八代/朴裕河戸塚悦朗
[体裁]四六判並製、272頁
[定価]2,600円+税
[ISBN]978-4-7684-7947-6
発行:白澤社
発売:現代書館

本書の内容

いまだ解決しない「慰安婦」問題。
「国民基金」をきっかけに分断され停滞した運動…。
残された時間も少ない中、何とか状況を打開したいという思いを抱き、解決の糸口を求め議論が交されたシンポジウム全記録をここに公刊する。
金学順さんが名乗り出て20年余りの月日が流れたが「慰安婦」問題は未だ解決していない。
残された時間が少なくなってきている今、「国民基金」をきっかけに分裂し停滞した運動側の状況を打開し、解決への糸口を見つけることはできないのか。
主催者(編者)のこのような思いから2012年3月10日に催されたシンポジウムでは、これまで一堂に会することのなかった6名のパネリストが、これまでの活動を振り返りつつ今後の展望について報告した。
さらに、全体討議では、とくに「国民基金」をめぐる問題を中心に、会場の参加者もまじえて厳しい議論が交された。本書は、そのシンポジウムの記録である。
河野談話」を否定する右寄りの声が大きくなってきている今、多くの人々に届けたい日韓の良心の記録!

目次から(カッコ内は執筆者)

まえがき(山下英愛)
1 開会の挨拶──アーレントの“世界愛”から照射する東北アジアの和解の条件(志水紀代子)
2 「国民基金」をめぐる再現の政治学(鄭柚鎮)
3 関釜裁判を支援して──原告ハルモニたちとの二〇年を振り返って(花房恵美子)
4 慰安婦問題二〇年の明暗(和田春樹)
5 修復的正義──国民基金が閉ざした未来(岡野八代)
6 問題はどこにあったのか──日本の支援運動をめぐって(朴裕河
7 和解の条件──真実とプロセス(戸塚悦朗
8 質疑応答・全体討議
あとがき(志水紀代子)
収録資料(シンポジウム当日配付の資料から一部収録)

執筆者略歴

[編者]

  • 志水紀代子(しみず きよこ)

1940年生まれ。追手門学院大学名誉教授。「女性・戦争・人権」学会元代表大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、同大助手を経て追手門学院大学講師・助教授・教授を経て2011年退職。
著書に『家族の倫理学』(丸善、2007)。『ジェンダー化する哲学』(共編著、昭和堂、1999)など。訳書に『ハンナ・アーレントフェミニズム』(B・ホーニッグ編、共訳、未来社、2001)など。

  • 山下英愛(ヤマシタ ヨンエ)

津田塾大学で国際関係学を、梨花女子大学で女性学を学ぶ。博士(国際関係学)。立命館大学非常勤講師。
著書に『ナショナリズムの狭間から──「慰安婦」問題へのもう一つの視座』(明石書店、2008)など。

[執筆者](掲載順)

  • 鄭柚鎮(チョン ユジン)〔2章〕

沖縄大学地域研究所特別研究員。大阪大学大学院文学研究科博士課程修了(2011)。同大学文学博士学位取得(2012)。
著書に『東アジアの冷戦と国家テロリズム』(共著、御茶の水書房、2004)、『現代沖縄の歴史経験──希望、あるいは未決性について』(共著、青弓社、2010)など。

  • 花房恵美子(はなふさ えみこ)〔3章〕

1948年生まれ。福岡在住、精進自然食料理屋「花ふさ」自営。92年より関釜裁判を支援、93年より「関釜裁判を支援する会」事務局。下関判決で「慰安婦」原告勝訴するも2001年広島高裁で敗訴、2003年最高裁で棄却される。以後、立法運動に軸足を移し、「早よつくろう!『慰安婦』問題解決法・ネットふくおか」設立。2010年に「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動2010」を全国の人々と共に発足させ、活動している。

  • 和田春樹(わだ はるき)〔4章〕

1938年生まれ。東京大学西洋史学科卒業。東京大学名誉教授。東京大学社会科学研究所に勤務、98年退職。大泉市民の集い代表、日韓連帯連絡会議事務局長、女性のためのアジア平和国民基金専務理事を務め、現在、日朝国交促進国民協会事務局長。
近著に『日露戦争 起源と開戦』(上・下巻、岩波書店、2009-10)、『日本と朝鮮の100年史』(平凡社新書、2010)、『北朝鮮現代史』(岩波新書、2012)など。

  • 岡野八代(おかの やよ)〔5章〕

同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教員。
著書に『法の政治学──法と正義とフェミニズム』(青土社、2002)、『フェミニズム政治学──ケアの倫理をグローバル社会へ』(みすず書房、2012)など。

日本近代文学研究者。世宗大学(韓国)日本文学科教授。
著書に『反日ナショナリズムを超えて──韓国人の反日感情を読み解く』(河出書房新社、2005)、『和解のために──教科書・慰安婦靖国・独島』(平凡社、2006)、など。

1942年生まれ。博士(国際関係学)。英国王立精神科医学会名誉フェロー。元弁護士。神戸大学大学院助教授を経て龍谷大学法学部・法科大学院教授、2010年定年退職。国際人権法政策研究所事務局長。JFORジュネーブ国連首席代表。
主著に『日本が知らない戦争責任──日本軍「慰安婦」問題の真の解決へ向けて』〔普及版〕(現代人文社、2008)、『国連人権理事会──その創造と展開』(日本評論社、2009)など。