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[書評・紹介記事など] 『女性の権利を擁護する』書評

梅垣千尋著『女性の権利を擁護する──メアリ・ウルストンクラフトの挑戦』が、『女性史学』第22号(女性史総合研究会)で書評されました。
女性史総合研究会さんのホームページはこちら↓
http://www.geocities.jp/joseishi_sougou/
評者の水田珠枝さん(名古屋経済大学名誉教授)は、『女性解放思想史』(ちくま学芸文庫)や『ミル「女性の解放」を読む』(岩波書店)などで知られるこの分野の第一人者です。
長文の書評なので、ごくさわりだけご紹介いたします。
まず「この本は、メアリ・ウルストンクラフトまの主著『女性の権利の擁護』(1792年)を解読した労作である」としたうえで、本書の企図を次のように指摘しています。

『女性の権利の擁護』は、読みやすい本ではない。著者も、理論的整理が不十分で一貫性・体系性に欠け、多様な系統の思想が混在し、権利・徳性・理性といった概念が明確に規定されず、多岐にわたる挿話が唐突にとりあげられるなど、欠点を指摘している。著者が設定した課題は、解読という作業を通じてこれらの欠点を補いつつ、『女性の権利の擁護』で語られたフェミニズムの基本的思想を抽出し、整理・分析・再構成することである。

そして、ルソー『エミール』との対比、権利の平等と差異、ウルストンクラフトの語りについての分析といった本書の論点に注目しながら、本書の全体を紹介して、次のように評価してくださいました。

本書は『女性の権利の擁護』を読む上で有益な指針となるであろうし、フェミニズムを論じる場合に、女性の置かれた状況の認識、差別を肯定する思想への反論、権利を軸とした理論構成など、貴重な示唆を与えてくれる。また『女性の権利の擁護』の周辺資料の丹念な調査も、この本の功績である。

ご講評、ありがとうございました。

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梅垣千尋『女性の権利を擁護する──メアリ・ウルストンクラフトの挑戦』刊行のお知らせ
http://d.hatena.ne.jp/hakutakusha/20111108/1320751936
「ふぇみん」第2975号に書評
http://d.hatena.ne.jp/hakutakusha/20111207/1323246070
出版ニュース」2012年1月上・中旬号で紹介
http://d.hatena.ne.jp/hakutakusha/20111228/1325067064