このたび白澤社では、木前利秋・亀山俊朗・時安邦治編著『変容するシティズンシップ』を刊行しました。
ロングセラー(当社比)の小玉重夫『シティズンシップの教育思想』、岡野八代『シティズンシップの政治学』に続くシティズンシップ論です。
日本では主に法学の分野で「市民権」という訳語で論じられてきたシティズンシップですが、グローバル化の進展にともない欧米では政治や社会の分野でホットなテーマになっています。
本書は大阪大学の木前利秋先生を中心とするグループによる研究成果をまとめたもの。
新たな議論が始まることを期待しています。
題名:変容するシティズンシップ
副題:境界をめぐる政治
編著者:木前利秋・亀山俊朗・時安邦治
体裁:四六判並製、192頁、定価2,000円+税、
発行:白澤社
発売:現代書館
本書の内容
市民の資格を問題化する概念として、今やグローバル化時代のキーワードとなった「シティズンシップ」。本書は、その定義と歴史から、個人とコミュニティの関係、市民と外国人の境界、コスモポリタニズムの可能性、シティズンシップ概念の再編まで、グローバル化の進展で変わりつつある市民の権利と義務をめぐる諸問題を明らかにする。ギデンズ、キムリッカ、ベンハビブ、アーレント等、現代の社会理論に照らしながら今日のグローバルなレベルでのシティズンシップを理論的に探求し、「諸権利をもつ権利」として提唱する共同研究の成果。
目次から
序 今なぜシティズンシップを問うのか(時安邦治)
1 グローバリゼーション
2 韓流ブームと大久保
3 シティズンシップという視座
4 女性の「社会進出」と産業的シティズンシップ
5 本書の内容
第1章 シティズンシップとそのコミュニティ(亀山俊朗)
1 シティズンシップの近代史
2 福祉国家というコミュニティ
3 新自由主義と「第三の道」の戦略
4 コミュニティ多元化の政治
第2章 〈市民〉と〈外国人〉−−コミュニティの境界とシティズンシップ(寺田晋)
1 コミュニティの境界をめぐる二つの構想
2 リベラル・ナショナリズム−−キムリッカの構想
3 コスモポリタニズム−−ベンハビブの構想
4 境界の構想とシティズンシップの現状
5 新たな課題と可能性
第3章 コスモポリタン・シティズンシップ(伊藤祐)
1 コスモポリタン・シティズンシップ−−その背景
2 アウトサイダーに権利と義務はあるか−−コスモポリタン・シティズンシップ批判
3 忠誠かアイロニーか−−コスモポリタンの徳をめぐって
4 コスモポリタンシティズンシップへの最初の布石
第4章 シティズンシップの再編と「諸権利をもつ権利」(木前利秋)
1 「人権」と無国籍者たち
2 集団的権利・集団別権利・国際的シティズンシップ
3 「諸権利をもつ権利」をめぐって
4 シティズンシップと民主的反復
おわりに(時安邦治)