白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

『ケアの倫理からはじめる正義論』が紹介されました

キテイほか著『ケアの倫理からはじめる正義論──支えあう平等』が、『出版ニュース2011年10月中旬号』の「ブックガイド」欄で紹介されました。
http://www.snews.net/news/1110b.html
以下、該当箇所を引用させてもらいます。

望ましい人間の条件は「依存」よりは「自立」と考える向きが強く、多くの学究も依存という状態を「人間にとってあってはならない例外的な状態」で「できる限り克服すべき状態」とみてきた。ところが哲学者として、また重度の障碍を抱える娘の母でもある著者キテイは「依存」という状態を「誰もが経験する当たり前の状態とみなすことから出発」することが重要で、社会には依存と依存をケアする労働が不可欠という認識をもつ必要があると説き、ロールズの『正義論』はじめ従来の政治哲学はそれを見落としてきたと指摘する。「みな誰かお母さんの子ども」として愛の労働を受けてきたから今、ここに存在しているわけで、本来は「等しくない者たち」が、それにもかかわらず、社会で無能力者扱いされることのない社会をめざすべきで、それこそが「公正な社会」であると、講演録とインタビュー、解説でわかりやすく紹介する。

おかげさまで『ケアの倫理からはじめる正義論』、売れ行きもまずまず好調(当社比)です。
ところでこの『出版ニュース』誌というのは、いわゆる業界誌なんですが、パラパラめくっているとけっこう楽しめます。
巻頭の「出版社・書店売上ランキング2010」で、業界全体の売上高が落ち込んでいるのを見ると暗いため息が出ますが、そもそも小社なんてこのランキングにもカウントされない泡沫会社なんだから気にしない!と明るく笑い飛ばして頁をめくると、「情報区」欄で、「神田古本まつり」(10/27-11/3)が近づいていることや、七つ森書館さんが新たなノンフィクション・シリーズの刊行を開始したこと、インパクト出版会さんから明治の三陸沖大津波関東大震災に立ち会った当時の文学者やジャーナリスト、知識人たちが書き残した文章のアンソロジー『天変動く 大震災と作家たち』が出たことなどを知って、ホホウと思ったりします。
今回の号でいちばん面白かったのが杉村晃一氏執筆「著作権事情」欄の「意味不明の翻訳で」と題されたコラム。爆笑しました。
出版社名と書籍名をここで記すことは、天に唾するようなものなので、遠慮させていただきますが、ある科学者の伝記に「意味不明の翻訳が多数見つかり、回収騒ぎになっている」とか。
例として挙げられている文は「これらのすごいブタが、あなたの精神に触れるのに最終的に成功したと立証します」。これは…、すごい。
このニュースにはオチもついています。

ネット上では「そんなにひどい翻訳ならば―」と話題になり古書の通販価格で高値を付けているとも報じられている。

いやはやなんとも。