白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

長谷川亮一『地図から消えた島々』

小社刊のロング・セラー『「皇国史観」という問題』の著者、長谷川亮一さんが、新著『地図から消えた島々 幻の日本領と南洋探検家たち』(吉川弘文館)を刊行されました。
吉川弘文館さんのホームページから→http://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b87031.html

目次
 まぼろしの島々への招待―プロローグ/疑存島とはなにか(北太平洋まぼろしの島々/海図と疑存島/日本近海の疑存島)/ヨーロッパ人と北太平洋(スペイン人と北太平洋/「無人嶋」と小笠原島/イキマ島の“誕生”/イギリス人と北太平洋グランパス島とヌートカ湾危機/マッコウクジラとグアノ)以下細目略/「南進」の夢想と現実/孤島をめぐる争い/中ノ鳥島の謎/疑存島の“消滅”とその後)/“山師”たちの夢のあと―エピローグ

内容説明
 明治末期に?発見?され大日本帝国に公式に編入された中ノ鳥島、一攫千金を夢見る冒険商人たちが相次ぎ探検の船を出したグランパス島…。19世紀後半から20世紀初頭、地図上に確かに存在した日本列島南方海域の島々。やがて実在しないことが判明するこれらまぼろしの島々の、“誕生”から“消滅”までの複雑に錯綜するミステリーを解きほぐす。

この本のベースとなったのは、長谷川さんのホームページの人気企画「幻想諸島航海記」。http://homepage3.nifty.com/boumurou/island/
ただし、単行本化するにあたり、大幅に改稿増補して充実した内容になっています。
サブタイトルに「南洋探検家たち」とありますが、著者の長谷川さんもある種の「探検家」です。とはいえ、アウトドア派の冒険野郎のようにサファリルックをまとって懐中電灯を片手にいざ突撃、というタイプではありません。しかし、書庫の奥深くに潜行し、史料を精査し、奇書を解読し、珍説と格闘する点では、まさしくミステリー・ハンターというにふさわしいでしょう。本書は、そんな長谷川さんが、古い海図の不思議を発見する旅に案内してくれます。
奇想天外なテーマを緻密な論証と平易な文章でつづった本書は、ぜひテレビ番組で取り上げてほしいほどですが、なにぶん、長谷川さんが「発見」するのは、それがなかったこと、なかったのにあることにされた理由という、映像化しにくい対象であるため、ちょっと難しいかも知れません。
「港を出発してもう五時間経ちます。海図によればこのあたりのはずなんですが…、あっ!あそこですね、見えてきました! 何もありません! 何もない海面が見えました」とミステリー・ハンターが叫ぶ場面が放映されたら、さぞや面白かろうと思うのですが、どうでしょうか?
…やはり、この面白さは活字で読んだ方が伝わりやすいかも知れませんね。
なお、小社の営業部長がもう何年も前に「ぶらり埋蔵金発掘の旅」とか「幻の温泉探訪記」とか、くだらない企画を長谷川さんに提案しているのですが、長谷川さん、ご記憶でしたら、お原稿をお送りください(笑)。