白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

猫の日には化け猫を

今日2月22日はニャンニャンニャンの語呂合わせで猫の日なのだそうですね。
猫の日には化け猫怪談はいかがでしょう。
小社の人気シリーズ(当社比)〈江戸怪談を読む〉叢書には化け猫怪談を取り上げた『猫の怪』(横山泰子・早川由美ほか著)があります。
本と一緒に移っているのは、取材でお世話になった浅草・「今戸焼白井」さん手作りの招き猫(丸〆猫)。
今も小社事務所の入り口で毎朝出迎えてくれます。
https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/20180814/1534221203

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『猫の怪』には、有名な佐賀鍋島家の化け猫騒動の原話の一つと思しき『肥前佐賀二尾実記』(早川由美注・訳)、飼い主の美女を救う猫の話「三浦遊女薄雲が伝」(門脇大注・訳)の原文を現代語訳とともに掲載。
そのほか、猫にまつわる江戸の随筆、日本や韓国での民間伝承、芝居や映画などから猫と人間の奇妙な関係を描き出した本書は、さながら江戸怪談猫づくしの観があります。
https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/20170719/1500453285
しかも、奇しくも佐賀藩の藩祖鍋島直茂(1538〜1618)の400回忌の年に刊行されたといういわくつきの逸品でございます。
https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/20170726/1501067285

…と、このブログに書いた記事をながめていたら、なんと、去年の今日2月22日に「今日は猫の日」と題して、『猫の怪』第五章で今井秀和さんが紹介していた随筆『谷の響』の逸話を紹介していましたので再掲します。

 

ある人が風の吹きすさぶ夜に灯火のもとで一人読書をしていると、飼い猫が「へろへろ」とやってきて手を前につかえ、「さぞ淋しく居られませう」と言った。動ぜずにキッと猫を睨んだ主人は、飼い主を思って言葉を喋るとは殊勝なこと、さあ、ともに語るべしと答えた。すると猫は主の顔をつくづくと眺めたのち、たちまち座を去ってそれきり姿を消してしまったという(平尾魯遷『谷の響』)。

 

「へろへろ」とやってくるところや、「さぞ淋しく居られませう」と言うセリフがなんともかわいくて、お気に入りの逸話です。

表象文化論学会サイトで『〈江戸怪談を読む〉牡丹灯籠』紹介

横山泰子・斎藤喬ほか著『〈江戸怪談を読む〉牡丹灯籠』が表象文化論学会ニューズレター『REPRE』で紹介されました。
https://www.repre.org/repre/vol35/books/editing-multiple/saitou/
紹介してくださったのは、共著者の一人、斎藤喬さんです。
斎藤さんは、横山泰子さんの「時代や地域を越境する「牡丹灯籠」に対して怪談文化史や比較文学を念頭に置いた領域横断的なアプローチ」(第一章美しき怪談・牡丹灯籠)や「門脇大氏による浅井了意『伽婢子』所収の「牡丹灯籠」の現代語訳」(第二章)や「怪奇とエロスを帯びた「骨女」の絵画表現に着目し、鳥山石燕からアニメ『地獄少女』に至る翻案の流れを指摘した今井秀和氏の論考」(第五章骨女の怪奇とエロス)について紹介しながら、ご自身の担当箇所については、簡潔に「円朝作における怪談パートの全文解説と、寄席の現場で惹き起こされていた幽霊の恐怖についての分析」と述べています。
が、ちょっと待ってください。
なんですか、この淡白な告知は!
控え目にもほどがあります。
斎藤さんご執筆の第六章「円朝口演『怪談牡丹燈籠』」と第七章「『怪談牡丹燈籠』を読む』―お露の恋着と良石の悪霊祓い」こそ、本書の目玉です。
第六章で斎藤さんは、円朝落語の怪談パートの全文について、他の落語「紺屋高尾」「崇徳院」「お若伊之助」「野ざらし」などとの関係にもふれつつ、円朝の語りに即しながら、ストーリーと背景を徹底解説。
第七章では、この面白怖いお話のなにが面白くてなにが怖いのかを、1『怪談牡丹燈籠』の文学史的な位置づけ、2死霊の恐怖と悪霊祓い、3説教としての怪談噺、の3節構成で解剖。落語家の芸談に寄りかかるのではなく、物語の構造と特徴に即して『怪談牡丹燈籠』の魅力を解き明かした本書のクライマックスです。
是非ご一読を!

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プラトン『ティマイオス/クリティアス』三刷出来

本日、品薄になっておりましたプラトン著/岸見一郎訳『ティマイオス/クリティアス』の三刷が出来あがってまいりました。
本書は、2015年の刊行後、ご評判をいただき、17年に重版(二刷)し、それも昨年秋から品薄気味になっていました。
「せっかくの名著(奇書?)の新訳なのだから切らすな!」の声に励まされ、このたびついに三刷にいたりました。
これもご愛読いただいた読者の皆様のおかげです。あつく御礼申し上げます。
本書は、プラトン晩年の代表作の一つで、西田幾多郎(『場所・我と汝』岩波文庫)やJ・デリダ(『コーラ・プラトンの場』未来社)が注目したコーラー(場)の概念や、H・アーレント(『過去と未来の間』みすず書房)やH・ヨーナス(『生命の哲学』法政大学出版局)が言及したデーミウールゴスによる世界創造の記述を含む『ティマイオス』と、その未完の続編でアトランティスの伝説で有名な『クリティアス』の新訳です。
なお『ティマイオス/クリティアス』は、一部のネット古書店で定価を上回る高値がついておりますが、同書は新刊書店さんで定価で購入できます。
現在、在庫は十分にありますので、店頭に見あたらなければ書店さんを通してご注文下さい。

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バレンタインに江戸怪談を

今日はバレンタインデーですね。
プレゼントには定番のチョコもいいですが、本もすてきな贈り物になります。
 小社の新刊『新選百物語――吉文字屋怪談本 翻刻・現代語訳』(監修=篠原進/翻刻・注・現代語訳=岡島由佳/コラム=堤邦彦・近藤瑞木)はいかがでしょうか。
カバー絵の行灯にともる小さな炎がハートウォーミングに見えませんか?

 

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※小社ではチョコレートは扱っておりません(写真は見本です)。


そもそも江戸怪談には愛をこじらせたお話が多いのです。
先日、東雅夫さんが『小説推理』3月号(双葉社)で『新選百物語』を紹介してくださったときに、ラフカディオ・ハーンによって作品化されたとして挙げられた「嫉妬にまさる梵字の功力」(ハーン「おかめのはなし」)も、「紫雲たな引蜜夫の玉章」(ハーン「葬られた秘密」)も、愛をこじらせたお話です。
『新選百物語――吉文字屋怪談本 翻刻・現代語訳』は、全国の主要書店で好評発売中です。
上級者向けには、小社〈江戸怪談を読む〉叢書の一冊『実録四谷怪談――現代語訳『四ツ谷雑談集』』もおすすめ。
愛を裏切った夫と関係者全員を十数年にわたり祟り続けたお話です。素敵ですね。
新宿区四谷左門町に今もある於岩稲荷田宮神社は、浮気封じの神様として信仰されたそうです。

東雅夫氏『小説推理』3月号で『新選百物語』紹介

『小説推理』3月号(双葉社)で、東雅夫さんが『新選百物語―吉文字屋怪談本 翻刻・現代語訳』(監修=篠原進/翻刻・注・現代語訳=岡島由佳/コラム=堤邦彦・近藤瑞木)を紹介してくださいました。
版元双葉社さんによ『小説推理』のサイトはこちら↓
https://www.futabasha.co.jp/magazine/suiri.html
同誌の「今月のこの一冊・幻想と怪奇」欄です。
該当箇所を抜粋させていただきます。

 


(『芥川龍之介英米怪異・幻想譚』岩波書店の紹介に続けて)芥川と英米文学の関わりを考えるときに看過できないのが東大英文科の学統だが、その礎を築いたひとりというべき小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが架蔵していた百物語怪談本として(一部では)有名な『新選百物語』が、岡島由佳による註と現代語訳(篠原進監修)、さらには堤邦彦、近藤瑞木のコラムも添えて、このほど白澤社(発売は現代書館)から上梓された。数ある百物語本の中でも、これまで本格的な紹介がなされてこなかった書目だけに、嬉しい企画である。
 ハーンは本書所収の「嫉妬にまさる梵字の功力」から「おかめのはなし」を、「紫雲たな引蜜夫の玉章」から「葬られた秘密」を、それぞれ自分流に作品化している。特に前者をハーン作品と読み較べてみると、興味深いことが分かるはずだ。亡妻の遺骸に僧が梵字を書く(耳なし芳一!)ところまでは同一だが、原典にはもうひと幕、夫が妻の遺体と一夜を明かすという恐怖ミッションが記されているのだ。こちらは同じくハーンの「死骸にまたがった男」さながらだが、同篇の原典は『新選百物語』ではなく『今昔物語』の「人妻成悪霊除其害陰陽師語」なのだった……中古から近世に至る怪異譚のカオスを目の当たりにする心地で興趣が尽きない。
 本書の各話の末尾には「類話」として、内容の近似する説話や作品が博捜され掲げられている。これはまことにありがたい配慮で、この記載を手がかりに、右に一例を示したように、古典怪談の沃野へ縦横に分け入ることができるのである。(『小説推理3月号』191頁より)

 


ていねいにご紹介いただき、ありがとうございました。
実は、この『新選百物語』を翻刻してみたら…と思いついたのは、東雅夫さんの『百物語の百怪』(現在は改題して『百物語の怪談史』角川ソフィア文庫)の『新選百物語』の項に「活字本は刊行されていない。」とあったからなのです。
そこで、読めない(読みにくい)ものを読めるようにして読者に提供することも出版の役割だと考えて『新選百物語』の翻刻を企画いたしました。
本書の企画のきっかけを作った東さんに「嬉しい企画である」と評価していただき、小社としてもうれしいかぎりです。
なお、東雅夫さんは、昨年末の『幽 30号―特集・平成怪談、総括!』の目玉企画「平成怪談文芸年表&『幽』の軌跡」でも、小社の〈江戸怪談を読む〉叢書を年表に加えてくださっています。あわせて御礼申し上げます。

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かんたん鴨鍋の作り方―『新選百物語』より

こう寒い日が続きますとやはり鍋物がありがたいですね。今夜の夕食に鴨鍋はいかがでしょうか。
『新選百物語』巻五の「鳬におどろく五人の悪者」に、権九郎という男が狐のくわえた鴨を横取りして「ねふかを求めて吸物こしらへ」とあるのをヒントに考えてみました。
鳬は鴨。「ねふか」は長ネギのことで、鴨といえばネギが欠かせません。
「吸物こしらへ」というからには、おそらく味噌や醤油は使わず、塩味のすまし汁に仕立てたのでしょう。
ネギをたくさん使った塩味の鶏鍋というイメージで作ってみました。

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・材料(分量はすべて「適量」ということで)
鴨肉(今回はロース薄切り肉を使いました)
長ネギ
鶏肉団子(鴨肉だけだと高くつくので、こっそり入れてあります)
白菜(江戸時代的には反則ですが、美味しいのでこっそり)
豆腐
舞茸(出汁を取るのに使いました)
昆布(同上)
椎茸(飾りです)
セリ(写真ではいろどりに春菊を使っていますがたぶんセリの方が合います)

・作り方
一、今回は煮込むので土鍋を使います。鍋に水をはり昆布と舞茸で出汁をとります。めんどくさい時は市販の白だしでもいいかもしれません。
二、沸騰したら鶏肉団子(鳥ブツでも可)と白菜、長ネギの白い部分を煮ます。
三、酒と塩で味付けしたら火を弱め、豆腐、椎茸、セリなどを入れ、そのうえに鴨肉を置いてひと煮立ちさせます。
四、仕上げに長ネギの青い部分を入れて出来上がりです。

☆ワンポイント☆
写真では煮込む前なので鴨肉が生煮えですが、鴨肉からは味と脂が出ますからしっかり煮込んだほうが美味しいように思います。

狐から横取りした鴨を食べた権九郎たちがどうなったかは、『新選百物語―吉文字屋怪談本 翻刻・現代語訳』(監修=篠原進/翻刻・注・現代語訳=岡島由佳/コラム=堤邦彦・近藤瑞木)で読むことができます。

岸見一郎『三木清『人生論ノート』を読む』三刷出来

本日、品薄になっておりました岸見一郎著『三木清『人生論ノート』を読む』の三刷が出来あがってまいりました。
本書は、2016年の刊行後、NHKEテレ「100分de名著」で取り上げられるなどご好評を賜り、17年に増刷(二刷)し、それも昨年末から品薄気味になっていたため、年明け、ついに三刷にいたりました。
これもご愛読いただいた読者の皆様のおかげです。あつく御礼申し上げます。
なお、岸見一郎著『三木清『人生論ノート』を読む』は、一部のネット古書店で定価を上回る高値がついておりますが、同書は新刊書店さんで定価で購入できます。
現在、在庫は十分にありますので、店頭に見あたらなければ書店を通してご注文下さい。
同じ著者による姉妹編『希望について―続・三木清『人生論ノート』を読む』ともどもご愛読くださいますようお願い申し上げます。

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