白澤社ブログ

人文社会系の書籍を刊行する小さな出版社です。

希望について―三木清『人生論ノート』より

昨夜放映されたNHKEテレ「100分de名著」の「三木清『人生論ノート』」の第4回のアンコール放送では、三木清『人生論ノート』より「死について」と「希望について」が取り上げられました。
NHK出版さんから出ている番組テキストでは、「死について」と「旅について」が取り上げられていたものですから、昨日の小社ブログでは「旅について」をご紹介してしまいましたが、ふだんテレビを見ないことから来る早とちりでした。お詫びして撤回いたします。
さて、「希望について」は、岸見一郎著『希望について―続・三木清『人生論ノート』を読む』に詳しく解説されています。
三木清『人生論ノート』を読む』(小社刊)の続編をつくる企画が持ち上がった時に、著者の岸見さんも小社の編集担当も、最初から、この「希望について」を中心に構成することを考えていました。
タイトルはもちろん、序論も「希望の人、三木清」としているのはそのためです。
そして、「序―希望の人、三木清」と、「希望について」を取り上げた最終章「12 人生は希望―「希望について」を読む」には、他の章にはないエピグラフがあります。
いずれも『人生論ノート』以外の三木の文章からの引用ですが、「希望」というテーマについての三木の考えをよく表していると思いますので、ここにご紹介します。
出典はいずれも『三木清全集』(岩波書店)からです(引用に当たり、旧仮名を現在の仮名遣いに改めています)。 

春はまだ遠い。けれども我々は希望を棄ててはならない。希望は徳である。希望を持つということの大きな徳であることが今日ほど忘れられている時代はないのである。
(全集第十六巻、一〇五頁。一九三六年三月三日掲載のコラム「詩の復活」より)

 

 

危機の正しい把握の中からこそ真の希望は生れてくる。真の希望というものは甘い見方から来る希望的観測の如きものではないのである。
(全集第十四巻、五六六頁。一九四一年十二月掲載「危機の把握」より)

 

「希望について」には、『人生論ノート』では独立した項目としてはとりあげられていない、愛についての考察も含まれています。
岸見一郎さんの解説は『希望について―続・三木清『人生論ノート』を読む』で読むことができます。
この機会にぜひ手にとってご覧いただければ幸いです。

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岸見一郎『希望について―続・三木清『人生論ノート』を読む』

今夜はNHKEテレ「100分de名著」の「三木清『人生論ノート』」の第4回のアンコール放送があります。
2018年11月26日(月)午後10:25~10:50/Eテレ
番組の案内はこちら↓
http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/64_jinseiron/index.html
今夜の放送では、三木清『人生論ノート』より「死について」と「旅について」が取り上げられます。
「100分de名著」の「三木清『人生論ノート』」の回は今回で終わり(水曜日に再放送があります)が、番組で取り上げたテーマは三木清『人生論ノート』の約半分くらいです。
Eテレの番組で取り上げなかったテーマ、懐疑、習慣、瞑想と感傷、利己主義、健康、秩序、仮説、旅、偽善、娯楽、そして希望、については、同じ岸見一郎さんの『希望について―続・三木清『人生論ノート』を読む』に詳しく解説されています。
『希望について』の目次等については下記をご覧ください。↓
https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/20170411/1491905968
今回の番組で取り上げる「旅について」については、昨年、このブログに「三木清『人生論ノート』の謎「旅について」」と題して『希望について』の編集過程でわかったこと(というか、わからないということがわかったこと)を書き留めましたのでご覧いただければ幸いです。↓
三木清『人生論ノート』の謎「旅について」
https://hakutakusha.hatenablog.com/entry/20170502/1493717615

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「孤独は山になく、街にある」三木清

昨夜はNHKEテレ「100分de名著」の「三木清『人生論ノート』」の第3回のアンコール放送がありました。
明日の朝と昼には再放送される予定です。
番組の案内はこちら↓
http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/64_jinseiron/index.html
この第3回のテーマは「孤独」と「虚無」。
三木清の「孤独について」は、一時期、高校国語の教科書に掲載されていたこともあるので、ある世代にとっては懐かしいかもしれません。
昨日もご紹介しましたが、先週土曜日の朝日新聞朝刊(11/17付)の人気コラム「折々のことば」でとりあげられた「ひとは孤独を逃れるために独居しさえする」も、この「孤独について」からでした。
なかでも有名なのは、次の一節でしょう。 

孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の「間」にあるのである。

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岸見一郎さんの『三木清『人生論ノート』を読む』(小社刊)では、この三木の言葉について時代背景や思想的文脈をふまえて詳しく解説しています。

「ひとは孤独を逃れるために独居しさえする」三木清

11月17日付朝日新聞朝刊の人気コラム「折々のことば」で三木清の言葉が紹介されていました。

 

ひとは孤独を逃れるために独居しさえする

 

哲学者の鷲田清一さんが、次のように解説していました。

 

人は大勢の人の間にあっても、というかその中でこそ孤独であると、哲学者は言う。だから人は、逆説的にも孤独から逃れるために独居しもする。が、反対に、孤独を味わうために街に出もする。孤独は何かの欠乏ではなく、まぎらすよりもむしろ味わうべきもの。その意味で孤独は感情よりも知性に属し、その中ではじめて世界と確と向き合うことができる。『哲学と人生』から。(鷲田清一

 

「人は大勢の人の間にあっても、というかその中でこそ孤独であると、哲学者は言う」とは、三木清『人生論ノート』の「孤独について」の章の有名なくだり「孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の「間」にあるのである」を念頭に置かれているのでしょう。「だから人は、逆説的にも孤独から逃れるために独居しもする」と続くのは、鷲田さんが冒頭に引かれた文を含む次の断章のこととなります。

 

孤独というのは独居のことではない。独居は孤独の一つの条件に過ぎず、しかもその外的な条件である。むしろひとは孤独を逃れるために独居しさえするのである。隠遁者というものはしばしばかような人である。(三木清『人生論ノート』「孤独について」より)

 

味わい深い一節です。
ところで、記事ではこの言葉の出典が「『哲学と人生』から。」とされていますが、この言葉の出典は『人生論ノート』です。

『哲学と人生』(講談社)にこの言葉が載ってるのは、『哲学と人生』という本が三木の高弟・桝田啓三郎氏が三木の没後に編んだアンソロジーで、その中に『人生論ノート』より「孤独について」の章が選ばれていたからなのです。
『哲学と人生』は、三木の代表的な論文やエッセイをおさめ、巻末には編者桝田氏による充実した解説と詳細な年譜もついたとてもよい本なのですが、残念ながら現在は新刊書としては流通しておりません。
講談社さんが学術文庫に入れてくださるとよいのに。
ちなみに、小社刊『三木清『人生論ノート』を読む』(岸見一郎著)では、このくだりは直接引用していませんが、167頁の岸見一郎さんによる解説がこの部分にあたります。

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『三木清『人生論ノート』を読む』はホントにあります

先週、オンライン書店hontoさんで日本思想hontoランキング1位になった岸見一郎『三木清『人生論ノート』を読む』ですが、今日も日本思想hontoランキング第2位になっていました(2018年11月14日18時現在)。
https://honto.jp/netstore/pd-book_27900679.html
それはうれしいのですが、hontoさんでもネット通販用の在庫が切れたようで、「現在お取扱いできません」との表示が出ています。
しかーし! 岸見一郎『三木清『人生論ノート』を読む』の在庫はございます。
現在も新刊書店で流通しており、定価で購入できます。
その証拠に、hontoさんの「店舗お取扱い状況」を見てみますと、全国の丸善さん、ジュンク堂書店さん、文教堂さんで、ええと確かに在庫なしや在庫僅少のお店が多いようですが、とにかく流通しております。
ちなみに、紀伊國屋書店さんのネット通販でも「ウェブストア用在庫がございますが僅少です」となっていますが、店頭在庫のあるお店もあります。↓
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784768479629
とにかく、岸見一郎『三木清『人生論ノート』を読む』は品切れではありません。
読者の皆様にはお手数をおかけいたしますが、最寄りの書店さんを通してご注文いただければ幸いです。

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「出版ニュース」で『教育勅語の戦後』紹介

出版ニュース」2018年11月中旬号で長谷川亮一著『教育勅語の戦後』が紹介されました。
該当箇所を抜粋させていただきます。

 戦後「失効」したはずの教育勅語を未だに評価する声は絶えない。本書は戦後出回った教育勅語の口語訳を原文と比較しながら、誤訳文が広まった来歴や経緯を辿ることで「失効」以降に教育勅語がどのように扱われたのか、その変遷を辿る。教育勅語の口語文訳は1972年、国民道徳協会が発行。ここではその来歴と流布を追うとともに、口語訳の誤りを明らかにする。その上で「教育勅語的なるもの」への欲望が何故絶えることなく続いてきたのか。そこには自民党改憲案に示された家族観や復活した道徳教育の中身にも通底するものがある。教育勅語の本質を知る上でも有意義な研究といえる。

出版ニュース」さんのサイトはこちら↓
http://www.snews.net/news/1811b.html
小社の『教育勅語の戦後』が掲載されたのはブックガイド欄の1頁目。
創元社さんによるオランプ・ド・グージュの「女性の権利宣言」の新訳、しかもビジュアル版の『女性の権利宣言』(シェーヌ出版社編、遠藤ゆかり訳)と、現代政治の傾向をズバリ言いあてたミネルヴァ書房さんの『後退する民主主義、強化される権威主義』(川中豪編著)にはさまれているという、絶好のポジション。
出版ニュース」さん、ありがとうございました。
それにしても、小社創業以来、なぜかたびたび小社出版物を取り上げてくださった「出版ニュース」さんが、来年3月で休刊というさびしい報せも。
また白澤社の本を取り上げてみようかと思っていただけるよう精進いたします。

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岸見一郎『三木清『人生論ノート』を読む』はあります

今夜はNHKEテレ「100分de名著」の「三木清『人生論ノート』」の第2回のアンコール放送があります。
2018年11月12日(月)午後10:25~10:50/Eテレ
番組の案内はこちら↓
http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/64_jinseiron/index.html
今夜は「自分を苦しめるもの」をテーマに、虚栄心、名誉、怒り、孤独、嫉妬、偽善、利己主義などが扱われます。
小社の岸見一郎『三木清『人生論ノート』を読む』の「3虚栄と名誉」、「4怒りと憎しみ」、「6孤独を超える」、「7愛と嫉妬」、及び同著者による続編『希望について――続・三木清『人生論ノート』を読む』の「10偽善と虚栄」の各章に相当する内容です。
なお、岸見一郎『三木清『人生論ノート』を読む』は、某大手オンライン書店で品切れ状態が続き(本日18時00分現在)、ネット古書店が定価を上回る高値をつけていますが、在庫はございます。
岸見一郎『三木清『人生論ノート』を読む』は、現在も新刊書店で流通しており、定価で購入できます。
読者の皆様にはお手数をおかけいたしますが、最寄りの書店さんを通してご注文いただければ幸いです。

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